菌類従属栄養植物にみられる内生菌根菌の多様性と特異性について

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タイトル別名
  • Diversity and specificity of endomycorrhizal fungi in myco-heterotrophic plants

抄録

菌類従属栄養植物(myco-heterotrophic plants)のうち,ラン科,ホンゴウソウ科,ヒナノシャクジョウ科,リンドウ科などの植物では根の皮層細胞内にコイル状菌糸が形成される内生菌根がみられる.  ラン科植物では種子発芽後の幼植物体において,菌根菌から植物に炭素化合物が供給されるため,この菌類従属栄養性がみられる.ラン科植物の中には葉緑素を失ったものが存在するが,これは菌類従属栄養性に世代を通じて完全に依存したものと考えられる.一般に無葉緑ランでは菌根菌の特異性が高いことが知られており,海外の研究事例では他の樹木に外生菌根を形成するイボタケ科,ベニタケ科などの菌類が菌根菌として報告されている.このような共生系では樹木の光合成産物が安定的な炭素源となっていることが示唆される.一方,日本国内ではツチアケビやオニノヤガラとナラタケ属,タカツルランとサルノコシカケ類,タシロランとヒトヨタケ科との関係などにみられるように,無葉緑ランと腐生性(病原性)の菌類との共生関係もいくつか報告されている.  他に,ホンゴウソウ科,ヒナノシャクジョウ科,リンドウ科などの植物にも無葉緑植物(菌類従属栄養植物)が存在し,これらはアーバスキュラー菌根菌(AM菌)と共生することが明らかになっている.AM菌の炭素源は他の光合成植物に依存していると考えられることから,この共生系では光合成産物がAM菌の菌糸を通じて無葉緑植物に供給される3者共生の存在が示唆される.  菌類従属栄養植物と菌根菌は,いずれも様々な分類群に属するものが報告されており,それぞれが独自に進化したことがうかがえる.ラン科植物については幼植物に菌類従属栄養性がみられ,この関係に世代を通じて依存する方向に進化した結果として無葉緑植物が出現したと考えられる.一方,菌類従属栄養植物とAM菌との関係については,AM菌の特異性,林床の光合成植物における菌類従属栄養性の有無など,今後の研究課題が山積している.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680637185024
  • NII論文ID
    130007004657
  • DOI
    10.11556/msj7abst.52.0.22.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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