On a mycoparasitic fungus attacking genus <I>Mortierella</I>

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  • <I>Mortierella</I>属を宿主とする菌寄生菌について

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Mortierella属は土壌や動植物遺体に広く分布する腐生菌で, 他の菌寄生菌の宿主ともなる. 吸器や付着器を形成し宿主菌糸内に侵入するM. 属の絶対寄生菌として現在までにトリモチカビ目エダカビ科, クサレケカビ目に類縁で所属不明のNothadelphia属が知られてきたが, 新たにM. 属に特異性を有す菌寄生菌を検出し二員培養を確立したので報告する. 2008年6月20日, 長野県菅平高原実験センター内のミズナラ林で採集したカモシカ糞を室温下で湿室培養したところ, 一週間以内に糞表面に白色のスポロドキア状菌叢が現われた. これは直径2mm未満の半球形で表面に柄を密生し, 透明, 単細胞の胞子をシンポデュロ型状に形成しSporothrix属等に似た外観を示した. この胞子をCMA, PDA, Sh3A等の通常培地上に分離したところ, いずれも良好に発芽し48時間以内にわずかな菌糸と短柄を生じて同様な胞子を形成したが, それ以上の成長は示さず衰退した. 他方, スポロドキア状菌叢の基部は硬い菌糸塊をなし, この断片を培地上に分離したところ, 表面に同様な胞子形成が起きるとともに, 成長の早い菌糸が伸長して胞子形成に至り, これは糞上に共存していたMortierella zychaeと同定された. そこでSh3A上に予め培養したM. zychaeおよび同属複数種のコロニー先端に本菌の胞子を接種したところ, いずれでも胞子単独時より良好な本菌の成長が認められ, 培地中に球形の厚壁胞子を形成した. また二者の菌の接触部では本菌菌糸を取り囲む宿主菌糸の錯綜が認められた. Syncephalis属, Nothadelphia属でも宿主の異常成長誘導が知られるが, これらでは吸器形成や宿主内への菌糸侵入が起きるのに対し, 本菌では菌糸内に宿主菌糸を引き込む傾向が認められた. 以上の形態的特徴, 寄生性状に基づき本菌寄生菌は担子菌門クリプトマイコココラックス綱のCryptomycocolax属に類縁な菌と考えられる. 同属は1990年にコスタリカより記載された単系属で, 宿主は微細構造に基づき子嚢菌と推定されている. 本研究は財団法人発酵研究所の助成を受けて行った.

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  • CRID
    1390282680637427968
  • NII Article ID
    130007004714
  • DOI
    10.11556/msj7abst.53.0.64.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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