多様な菌類が森林樹木の落葉分解に果たす役割
書誌事項
- タイトル別名
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- Roles of diverse fungi in decomposition of leaf litter of forest trees
抄録
森林土壌に生息する多様な菌類(担子菌類、子嚢菌類、接合菌類)の落葉分解力を、培養系における滅菌落葉への接種試験により比較した。29種の菌類をオオシラビソ・シラビソ(Abies)とダケカンバ(Betula)の落葉に接種し10 °Cと20°Cで培養した(実験1)。また27種の菌類をカラマツ(Larix)落葉に接種し20°Cで培養した(実験2)。いずれの樹種においても落葉分解力は一般に、子嚢菌類や接合菌類よりも担子菌類で高かった。担子菌類は落葉中のリグニンと炭水化物をさまざまな比率で分解した。子嚢菌類にはリグニン分解力は欠くが炭水化物を選択的に分解する種もいたが、子嚢菌類や接合菌類の多くの種において顕著な落葉分解力は認められなかった。以上の結果は、演者らが(i)60種の菌類によるブナ(Fagus)落葉の分解、(ii)22種の菌類によるヒノキ(Chamaecyparis)落葉の分解、(iii)6種の菌類によるヤブツバキ(Camellia)落葉の分解を調べた先行研究の結果とおおむね一致している。実験1において、落葉の重量減少率(初期重量に対する%)はAbiesよりBetulaで、また10°Cより20°Cで大きかった。同様にリグニンと炭水化物の重量減少率もAbiesよりBetulaで大きかった。炭水化物の重量減少率は10°Cより20°Cで高かったが、リグニンの重量減少率に培養温度処理間で有意差は認められなかった。今回の供試菌株によるリグニン分解は、炭水化物分解に比べて温度感受性が低いといえる。実験2において、担子菌類による分解を受けた落葉のリグニン濃度と窒素濃度との間に有意な正の相関関係が認められた。以上の結果は、菌類の種構成に加えて、落葉の樹種や温度条件の違いが、落葉の分解量やリグニンと炭水化物の分解比率、および分解産物の化学組成に影響しうることを示唆している。
収録刊行物
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- 日本菌学会大会講演要旨集
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日本菌学会大会講演要旨集 50 (0), 59-59, 2006
日本菌学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680638715392
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- NII論文ID
- 130007004985
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可