富士山亜高山帯針葉樹林における数種外生菌根菌の子実体バイオマスの減少

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タイトル別名
  • Decline of fruits bodies biomass of some ectomycorrhizal fungi in sub-alpine coniferous forests of Mt. Fuji

抄録

地球環境の変動に伴って,様々な野生生物の生息状況も質的・量的に大きく変化しつつあるといわれている。しかし,同じような変化が菌類においても起きているか否かについての調査例は多くはない。演者は,富士山の海抜1,700-2,100mの範囲にある亜高山帯針葉樹天然林(シラビソ-オオシラビソ林およびコメツガ林)で外生菌根菌の子実体発生のモニタリング調査を1982-2006年までの25年間行い,それにもとづいて子実体のバイオマス変動を解析した。その結果,Lactarius repraesentaneusRussula adustaHydnellum caeruleumCortinarius pseudosalorRozites caperataおよびGomphus fujisanensisの6種の菌の子実体バイオマスが経年的に減少したことが明らかとなった。その原因としては,いわゆる「きのこ狩り」に代表される人為的な影響も大きいと考えられる。特にC. pseudosalorR. caperataおよびG. fujisanensisの3種は現在に至るまで,あるいは過去において食用菌として利用されてきたことが子実体バイオマス減少の一因として考えられる。しかし,これら以外の3種は食用菌としては利用されておらず,そのバイオマス減少には人為的な影響以外の要因の関与が考えられる。そこで,富士山亜高山帯針葉樹林の推定有効積算気温の変動と子実体バイオマスの変動との相関を分析した。その結果,L. repraesentaneusの子実体バイオマスの変動と富士山亜高山帯針葉樹林での有効積算気温の変動との間には相関が認められ,年々の有効積算気温の上昇が本種の子実体バイオマス減少の一因と考えられることが示された。しかし,R. adustaおよびH. caeruleumでは子実体バイオマス変動と推定有効積算気温変動との間に相関は認められず,他の要因によるバイオマス減少の可能性が残された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680639405568
  • NII論文ID
    130007005185
  • DOI
    10.11556/msj7abst.51.0.98.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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