生物個体の機能を立体的に探る毒性学研究
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- 井川 洋二
- 独立行政法人 理化学研究所 名誉研究員
書誌事項
- タイトル別名
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- Extensive Application of Toxicology in Biological Research
抄録
古来、毒物は権力の交替のツールとして使われてきた。有名なのは、クレオパトラ姉妹に関わる毒殺である。毒蛇に乳首を噛ませて、自殺した手法も有名である。ワインに毒物を混ぜられることもあり、コルクを空けるのを客の面前で行う習慣も、毒殺を防ぐためでもあった。<BR> サソリの毒とかコブラの毒とか、少量で大きな動物を死に至らしめる仕組みは、動物個体の生命維持機構を知る貴重な手がかりを与えてくれる。<BR> 毒物生物学はともすると、薬剤の副作用を避ける方向に向かってしまったが、これは有用性を前に出した経済指向の故でもあろうが、生物個体の発生、進化、生命維持機構が窮極的には、思考能力を持った優れた人間という生物を地球上に存続せしめた不思議さを解く鍵の基本になっている。<BR> 以前に、私は、白血病細胞を分化させて治療に導く研究を、数社の製薬会社の支援を得て行ったことがあった。マウスのFriend白血病細胞を分化させ、赤血球系細胞に導く物質の探索を行った。「味の素」と共同研究をし、フォリスタチンを見出したり、毒性があると薬剤としての開発がストップされたトリコスタリンAが後の細胞の分裂機構の研究に有用となったのは周知の事実である。<BR> 近年、日本の野生マウス(モロシヌス)の近交系が樹立され、ヨーロッパ経由で米国で樹立された近交系との交配で、一部染色体を交換したコンソミックマウス系が、モロシヌス由来のSNPを用いて同定可能となった。ある10個位の遺伝子を含んだ部分は、病態の発生の様相のスクリーニングに有用となった。例えば、脂肪の沈着を皮下から内臓周囲に変える遺伝子なども明らかにされつつある。このような系への化学物質による影響の解析は、今後、多方面で有用となろう。<BR> この様に毒性生物学は、実に広い将来を持っている、生物の深奥を教えてくれる研究領域と信ずる。<BR> 研究者諸君は、広い世界観の上に、更に研究を発展させてもらいたい。<BR>
収録刊行物
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- 日本トキシコロジー学会学術年会
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日本トキシコロジー学会学術年会 38 (0), 32-32, 2011
日本毒性学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680639681408
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- NII論文ID
- 130007005278
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可