鵞足部痛が出現した症例を経験して ~C3-7椎弓形成術後の症例~

Search this article

Description

【はじめに】 鵞足部痛は、繰り返しの膝関節屈伸および下腿外旋において鵞足腱部の伸張、摩擦によって炎症を起こすと言われている。今回、経過中に鵞足部痛が出現した症例を経験したのでその要因をふまえ報告する。なお、症例には本報告の趣旨を説明し書面上で同意を得ている。<br>【症例紹介】 50代女性。2~3年くらい前から特に外傷なく、左手の痺れと両膝から足部にかけての痺れあり。特に朝方と寒い時に症状増悪し歩行困難となる。診察にてC4/5, C5/6の狭窄症による頸髄症と診断され、これに対し、C3-7の椎弓形成術を施行。術後痺れ消失し、独歩自立。術後1カ月で自転車エルゴメーターを開始し、4日目で歩行時に右鵞足部痛が出現した。<br>【評価及び理学療法】 圧痛所見は鵞足部(+)、MCL(-)、関節裂隙(-)、鵞足炎に対する疼痛誘発テストは縫工筋(+)、薄筋(+)。視診にて右膝関節自動運動に伴う脛骨の回旋は常に外旋位であり、右膝伸展位での膝蓋骨の内側方向の可動性低い。Ober test(+)、MMTは下腿三頭筋2レベル。歩行右立脚中期、段差昇降や立ち上がり、ペダリング動作でknee in。両側扁平足、立位での足部アライメントが回内位であり、回外の可動域制限わずかにあり。大腿骨骨頭の前捻の左右差なし。大腿二頭筋短頭の圧痛(+)。足部のテーピングで疼痛軽快試みるも歩行時痛変化なし。<br> 理学療法は、縫工筋、薄筋に対し選択的反復収縮によるリラクゼーション。膝蓋骨可動性改善目的・脛骨回旋改善目的に大腿筋膜張筋の反復収縮によるリラクゼーション、ストレッチ、大腿二頭筋短頭のフレクションマッサージ、外側膝蓋支帯のストレッチ。足部に対し、後脛骨筋誘導での足部回外運動と足関節底屈位での内在筋強化を実施。縫工筋、薄筋の反復収縮後に歩行時痛、圧痛の軽減得られるも持続性なかったが、鵞足部痛発症約4週で圧痛、歩行時痛消失した。<br>【考察】 本症例が鵞足部痛に至った要因として、3つ考えられた。1つ目は脛骨外旋を引き起こす要因として、大腿筋膜張筋のタイトネス、大腿二頭筋短頭のスパズム、大腿筋膜張筋を緩めた肢位で膝蓋骨がより内側へ可動得られたことから外側膝蓋支帯の伸張性低下。2つ目は足部回内によるknee in。3つ目は足部回内と下腿三頭筋の筋力低下の状態で、自転車エルゴメーターのペダリング動作によるknee inアライメントの助長。<br> いずれも、相互にknee inアライメントを助長し鵞足腱部への伸張・摩擦を引き起こした。今回、自転車エルゴメーターを中止し、脛骨外旋を引き起こす外側支持機構へのアプローチとトリガー筋となった縫工筋と薄筋のリラクゼーションにて疼痛改善を得られた。<br>【まとめ】 本症例に対し、足部回内へのアプローチが知識不足により十分に行えなかった面が反省点であるが、今回それ以外の要因を追求し、アプローチすることで鵞足部痛の改善を経験した。また、理学療法士が運動療法経過中の疼痛に対し、疼痛増悪を回避し軽減を図るために、いかに痛みを解釈しアプローチすることが大事かを実感した。

Journal

Details 詳細情報について

Report a problem

Back to top