野球肘に対する投球動作指導を行った一症例
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- 下田 健一朗
- おおしろ整形外科クリニック リハビリテーション科
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説明
【はじめに】<BR> 内側型野球肘では、acceleration期で非生理的な強い外反(牽引)ストレスにより障害が引き起こされ、特に成長に伴う障害が多い。保存療法として、主に投球数の制限や安静、物理療法が行われてきた。当院では、内側型野球肘に対して投球フォームに問題があると考え、肘関節への治療の他に投球フォームも含めた理学療法を実施している。今回、少年野球の内側型野球肘に対して同様の理学療法を実施し、投球動作時の疼痛が改善されたので、これを報告する。<BR> 【症例】<BR> 12歳、男性。硬式野球、右投げのオーバースローの投手である。現病歴では平成19年4月28日試合で投手として100球以上投球後、疼痛が出現。4月29日来院し医師の診断後、投球を一時中止した。5月12日に疼痛が消失したので投球を再開し投球フォーム改善のため理学療法を開始した。<BR> 【初診時評価】<BR> 安静・動作時痛は認めなかった。圧痛は前腕屈筋群に認められた。関節可動域は肘関節屈曲135°、伸展0°、肩関節2nd外旋130°であった。外反ストレステストは陰性で疼痛は認めなかった。前腕ストレッチングテストで前腕屈筋群に伸張感の訴えがあった。X線所見で軽度のfragmentが認められた。acceleration期での肘関節内側に疼痛の訴えがあった。既往歴はなかった。投球フォームでは、Wind‐up期に軸足のつま先の背屈がみられた。acceleration期に体幹と頭部の軸が不一致の状態で体幹の回旋運動がみられた。<BR> 【治療】<BR> 右肘関節への治療:前腕屈筋群のタイトネスに対して物理療法(ホットパック)、マッサージ、ストレッチを行った。投球フォームの指導も並行して行った。<BR> 【経過】<BR> 5月16日に塁間を5割程度で投球し疼痛はなかったため距離を伸ばしていった。6月8日にピッチングを30球程度全力で投げ疼痛は出現しなかった。<BR> 【考察】<BR> 本症例は、少年野球投手に発症した内側型野球肘に対し、肘関節の治療と投球フォームの指導を行った症例である。今回の症例は、肩甲胸郭関節機能、2nd外旋の可動域は保たれていたが、体幹回旋不足による肘関節外反ストレスが増大していた。Wind‐up期に重心が後方に偏移した状態でfoot plantに移行し、早期に体幹の投球方向への回旋が生じていた。その結果、下肢・体幹の運動エネルギーを補うためacceleration期に上肢での代償動作が生じ、前腕屈筋群の過活動が強要され疼痛が生じたと考えられる。また、acceleration期の体幹と頭部の軸の不一致による体幹回旋不足の影響もあると考えられる。これに対し、Wind‐up期の前方重心を指導し、体幹と頭部が同期して回旋するように指導した。結果、foot plant時に体幹の回旋が抑えられたこと、体幹と頭部の軸が一致したことで体幹回旋不足が改善した。そのため、肩関節での過度の水平外転の減少、急激な肩関節の内旋運動の減少により肘関節への外反ストレスが減少したと考えられた。今回の様に、肘関節への治療の他に投球フォームを含めた理学療法が有効であると考えられる。<BR>
収録刊行物
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- 東海北陸理学療法学術大会誌
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東海北陸理学療法学術大会誌 23 (0), C010-C010, 2007
東海北陸理学療法学術大会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680643042048
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- NII論文ID
- 130007005607
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可