最大発声持続時間-MPT-の再現性の検討

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【目的】臨床において、声量に乏しく呼吸数の増加がみられる症例においては、活動性の低下および運動耐容能の低下がみられることをよく経験する。これは、呼吸、循環、運動機能が発声機能に影響を与えているのではないかと考えられる。発声機能を簡便に、定量的に評価することができる検査法の1つとして、最大発声持続時間(以下、MPT)の測定が挙げられる。この評価法は古くから臨床において、特に言語療法の分野で用いられており、母音/a/を話声位にて最大限持続できる時間を測定する。近年、MPTは発声機能のみでなく呼吸機能を示す指標として検討され、筋ジストロフィー症例や頚髄損傷症例においてMPTと呼吸機能との有意な相関が報告されている。また、我々も心疾患患者を対象に、症例数は少ないものの、MPTと運動機能との関係を報告している。MPTにおいては被験者の習熟度や努力度など、結果に影響する因子が多数存在するが、この信頼性を検討した報告は見当たらない。本研究の目的は、MPTの再現性について検討することである。 【方法】被験者は健常男性6名とし,年齢21.7±0.8歳,身長170.7±7.8_cm_,体重66.4±12.2kgであった。全例において、MPT低下の要因となりうる、呼吸・喉頭調節運動の中枢レベルにおける障害、また声門閉鎖不全などの発声機能の障害はみられなかった。また、検者はMPT測定の経験のない理学療法士および作業療法士7名が行った。MPTの測定は椅子座位にて行い、数回深呼吸を行った後に最大吸気位から母音/a/を話声位にて最大限持続させ、その持続時間を測定した。測定は十分休息を挟みながら3回測定し、その最大値を測定値とし、五日間連続で行った。信頼性の検討は検者内信頼性ICC(1,1)と検者間信頼性ICC(2、1)を用いた。また、被検者には本研究の趣旨を十分説明し,十分な同意を得た。 【結果】各検者における五日間の検者内信頼性ICC(1,1)は0.699から0.928(平均0.824±0.08)であった。さらに、検者間信頼性ICC(2,1)は0.856であった。 【考察】本研究の結果より、検者内信頼性及び検者間信頼性はともに比較的良好な結果が得られ、MPTにおける評価の再現性が確認された。検者内信頼性におけるばらつきは、被験者の検査に対する経験の関与が考えられる。また、MPTと呼吸機能との相関に関する検討は一部疾患においてのみ行われており、今後幅広い疾患におけるMPTの信頼性の検討が必要である。

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