claw toeが歩行に及ぼす影響
書誌事項
- タイトル別名
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- 床反力の視点から
説明
【目的】claw toeはHelfetらによって中足趾節関節(以下MTP関節)過伸展・近位趾節間関節(以下PIP関節)屈曲・遠位趾節間関節(以下DIP関節)屈曲しているものとされている。この変形を生じる要因としては脳卒中や糖尿病などがあり、歩行能力の低下につながる一因となっている。今回、claw toeによる機能不全が原因で立脚後期に著明な異常歩行を呈していると予想される症例について、床反力の視点から歩行に与えている影響を評価したため、考察を加えて報告する。<BR>【方法】対象は第4腰椎すべり症に対し脊椎固定術を施行された80歳代の男性で既往歴には糖尿病があった。右股関節周囲筋に軽度筋力低下と右足部~足趾の痺れを認めた。足趾の随意的な屈伸は可能であった。歩容は歩行周期を通し頚部・体幹が右側屈し右重心となる傾向が強くなっていた。また右立脚中期(以下MSt)からはclaw toeが出現し、足関節底屈による踵離地が行えず、右立脚後期(以下TSt)~両脚支持期にかけての重心保持ができない状態であった。そのために過度な重心の下降を生じ、前方への推進力も低下していた。更に症例からは易疲労の訴えがあった。<BR> 床反力計は、KISTLER社製のForce Plate Type 9286Aを使用し裸足歩行中の床反力を指枕装着時と非装着時で測定した。また、健常者の床反力も測定した。指枕はclaw toeの対処療法として用いられるものを参考とし、ガーゼを基節骨の下に入れ、過度な足趾の屈曲が生じないように設定した。<BR> 測定結果は、指枕非装着時と指枕装着時、左下肢、健常者と各々の比較を行い検討した。<BR>【結果】健常者や左下肢と指枕非装着時との比較では、前後方向の床反力において、TSt~前遊脚期(以下PSw)に著明な低下を認めた。指枕非装着時と装着時との比較では、装着時の方がTStにおける床反力のピークは向上が大きく、PSwでの床反力には大きな差はなかった。<BR> また、症例からは、指枕非装着時よりも装着時の方が歩きやすいとの感想が得られた。<BR>【考察】今回床反力が低下していたTStは身体を支持脚より前へ運ぶ周期として、PSwは観察脚の遊脚初期(以下ISw)への準備をする周期として役割づけられている。今回注目すべきはフォアフットロッカー機能であり、TStでは床反力ベクトルがMTP関節を通過し、腓腹筋とヒラメ筋が歩行周期の中で最大に活動する。この時、MTP関節を回転軸として踵が持ち上がることで重心の高さや反対側の歩幅を確保している。しかし、今回の症例では前足部の支持が不十分なため、足関節底屈筋群の活動が最大限に発揮されず床面を押す力が十分に伝わらない結果、床反力が顕著に低下したと考える。また、重心の高さについては、支持脚ではTSt時の踵離れでコントロールされ、反対側では初期接地(以下IC)時の膝関節伸展と踵接地でコントロールされる。本症例では上記のように足関節底屈筋群の筋力が発揮できないことが要因となり、重心低下の抑制が不十分となったことが理由に上げられる。PSwの床接地面は、母趾球~第1・2趾であり長母指屈筋・長指屈筋の活動が必要となる。この活動は内側縦アーチのサポートとバランス保持に関与するとされている。しかし本症例の場合にはclaw toeによる筋の機能不全に加えMTP関節の伸展が十分に得られないことでwindlass機能も効かず十分な床反力を得られていないことが予測され、反対脚へのスムーズなweight shiftも阻害していると考えられる。結果として、歩幅や歩行速度の低下を招き、歩行効率の低下から易疲労につながっていたと考えられる。<BR> 指枕の使用時に関しては、前足部に一定の支持面を確保できたことによりフォアフットロッカー機能が効きやすい環境が得られ、TStで足関節底屈筋群が活動しやすく床面を押す力も伝えやすくなった結果、床反力の低下を軽減することにつながったと考える。これに対してPSw期に関しては、指枕を使用しても支持面が不足し、本来必要なMTP関節・足趾の伸展不足や長母指屈筋・長指屈筋の機能不全も変わりないことで床反力低下の改善には効果がなかったと考えられる。<BR> これらの結果より、歩行効率の確保においてMTP関節を軸とした足関節底屈筋群の活動や足趾機能の重要性が改めて確認された。またclaw toeへの対応としては、指枕だけでは適切な床反力得るには不十分と考えられ、今後足底板を含めた検討を行いたい。<BR>【まとめ】claw toeが歩行に与える影響に関して、床反力の視点から評価した結果、立脚期のTSt~PSwにかけて著明に前後方向の床反力が低下していた。これはclaw toeによる前足部の支持面積狭小やそれに伴う下腿三頭筋・足趾筋の活動低下のためであると考えられた。<BR> 指枕の使用に関しては、TStにて支持面を確保する補助となり一定の床反力を得る効果はあるが、PSwで正常な床反力を得る補助となり得なかった。
収録刊行物
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- 東海北陸理学療法学術大会誌
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東海北陸理学療法学術大会誌 27 (0), 135-135, 2011
東海北陸理学療法学術大会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680643088256
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- NII論文ID
- 130007005670
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可