コンパートメント症候群により、脛骨、腓骨神経麻痺を呈した1症例
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- 木村 創史(RPT)
- 石川勤労者医療協会 城北病院 リハビリテーション科
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- 広瀬 辰巳(RPT)
- 石川勤労者医療協会 城北病院 リハビリテーション科
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- 笛吹 亘(MD)
- 石川勤労者医療協会 城北病院 リハビリテーション科
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説明
【はじめに】 今回、深部静脈血栓症(以下DVT)、横紋筋融解症により、コンパートメント症候群が生じ、脛骨、腓骨神経麻痺を呈した症例を経験した。理学療法を実施し、症状が増悪せずに可動域が改善し、歩行獲得したので報告する。尚、本発表の趣旨及び目的を本人に説明した上で同意を得た。<br>【現病歴】 30代男性。飲酒後に深夜に帰宅、そのまま就寝した。翌15時に起床し、両下肢のしびれ、腫張を自覚。夜になり疼痛も出現。当院に救急搬送され、精査、加療のため入院となった。<br>【入院時所見・治療経過】 両下肢全体に浮腫著明。左足部チアノーゼ、右足背発赤あり。CPK10750IU/l。超音波検査では血栓の評価困難。CT検査上、筋区画に一致した両下腿背側の浮腫性変化あり。MRAにて左膝窩静脈閉塞あり。DVT、横紋筋融解症、コンパートメント症候群、右下肢蜂窩織炎と診断し、抗凝固療法、抗生剤治療開始された。発症18日目、CPK4066IU/lと改善あり。理学療法処方され、開始となった。<br>【理学療法初期評価】 両下肢浮腫著明。MMT足背屈右2、左0。底屈右4、左0。左足部表在感覚鈍麻、しびれ感あり。下腿周径右38㎝、左47.5㎝。ROM検査左足背屈-30°。車椅子移動自立。短距離であれば両松葉杖歩行可能。左下垂足、左荷重時痛あり。<br>【経過】 疼痛のない範囲で、下腿周径、CPK値を確認しながらROM練習、荷重練習等の理学療法を実施した。発症20日目、CPK3143IU/l、左下腿周径44㎝。30日目、CPK 1188IU/l、左下腿周径42㎝、左背屈-20°。51日目に行われた神経伝導速度検査では、脛骨、腓骨神経ともに運動・感覚神経電位導出されなかった。CPK275IU/l、左下腿周径39㎝、左背屈-15°。52日目左足関節背屈制限に対して装具、補高靴作成。片松葉杖歩行可能。61日目退院。<br>【退院時評価】 MMT足背屈右5、左0。底屈右5、左0。感覚障害変わりなし。左下腿周径38.5㎝。左足背屈-15°。補高靴装着にて片松葉杖歩行自立。独歩可能。<br>【考察】 本症例は飲酒後に長時間同姿勢でいたことにより、静脈血流のうっ帯、筋の循環障害を引き起こし、DVT、横紋筋融解症が発症したと考えられる。静脈圧亢進や筋の腫脹によって、コンパートメント症候群が生じ、神経組織の圧迫により末梢神経障害が生じたと考えられる。一般的にDVTでは弾性ストッキングによる圧迫療法や歩行練習などの理学療法が推奨されている。一方、コンパートメント症候群における保存療法は局所の安静が必要である。また、横紋筋融解症に対しては、CPK値を確認しながら、練習量を調整し、筋の融解の増悪を防ぐ必要がある。これらより、本症例に圧迫療法の適応はなく、安静が必要と考えられた。しかしながら、左足関節に著明な背屈制限を呈しており、積極的な理学療法が必要であった。今回、疼痛の訴えや腫脹、CPK値を確認しながら介入することで、CPK値の上昇、腫脹の増悪なく、歩行の獲得、不十分ではあるが、可動域の改善を図る事が出来た。<br>【結語】 DVT、横紋筋融解症、コンパートメント症候群が合併した保存例において、検査値、臨床所見に注意しながら理学療法を実施することが重要である。
収録刊行物
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- 東海北陸理学療法学術大会誌
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東海北陸理学療法学術大会誌 28 (0), 151-, 2012
東海北陸理学療法学術大会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680643229056
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- NII論文ID
- 130005455965
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可