階段降段時のみに不安定性が認められた足関節三果骨折の一例
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説明
【はじめに】 術後25週を経過した足関節三果骨折で可動域、筋力は健側と同程度に改善しているにもかかわらず、階段降段時に不安定性を認める症例を経験した。<br> 今回、解剖学的に骨折部による影響を受けやすい長母趾屈筋(以後FHL)に着目し、超音波画像診断装置(以後エコー)を用いて観察したところ、深層部の滑走性、柔軟性の低下を認めた。治療ではFHL深層部分の滑走性、柔軟性を改善し、近位収縮距離(以後amplitude)を再獲得したところ、階段降段時の不安定性の改善が認められた。<br>【症例紹介】 症例は60歳代の女性で、自宅で転倒し受傷した。受傷後12日目に観血的骨接合術が施行された。術後6日で理学療法を開始し術後51日目に外来通院となった。術後65日目に階段降段時の不安定性が残存するものの理学療法は一旦終了となった。しかし、不安定性が継続するため術後175日目に理学療法が再開された。<br>【方法】 術後175日時の健側と患側の足関節、足趾の可動域、筋力を徒手検査にて測定し、治療前後のFHL深層部分の滑走性、柔軟性をエコーで観察した。また階段降段動作も観察した。症例にはヘルシンキ宣言に基づき本研究の趣旨を説明し書面にて同意を得て実施した。<br>【結果】 患側の可動域、筋力は健側と比べ、同程度であった。治療前のエコー所見では、健側に比べ患側ではFHL深層部分の滑走性、柔軟性の低下が認められた。治療後のエコー所見では、不完全ではあるがFHL深層部分の滑走性、柔軟性の改善が観察された。<br> また階段降段動作の不安定性も改善していた。<br>【考察】 FHLのamplitudeが再獲得されたことで、階段降段時の患側支持期である踵離地からつま先離地の間で、母趾伸展位でのFHLの遠心性収縮が行いやすくなり、動作改善につながったと考えられた。<br> 今後の課題として症例数を増やし、傾向を探っていきたいと考える。<br>【まとめ】 足関節三果骨折後に階段降段時に不安定性を認める症例を経験した。<br> 可動域、筋力は徒手検査では健側と同程度であったが、エコー所見では健側に比べFHL深層部分の滑走性、柔軟性の低下を認めた。<br> 不完全ではあるが、FHLの滑走性、柔軟性を改善し、amplitudeを再獲得することで、階段降段動作時の不安定性の改善が認められた。
収録刊行物
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- 東海北陸理学療法学術大会誌
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東海北陸理学療法学術大会誌 28 (0), 152-, 2012
東海北陸理学療法学術大会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680643230080
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- NII論文ID
- 130005455966
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可