酸素を添加した内蔵ブレンダーを有しないNPPV使用患者に対する呼吸介助の安全性の検証

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【目的】 内蔵ブレンダーを有しない非侵襲的陽圧換気装置(以下NPPV)において、しばしば、SaO2を90%以上に維持する為に、呼吸回路に酸素が添加される。また、このような患者に対して、呼吸困難感の緩和や排痰を目的に呼吸介助が行われるが、その際のFiO2についての報告は少ない。そこで、呼吸介助による一回換気量(以下TV)の増加が、FiO2と呼吸困難感に与える影響を調査し、呼吸介助の安全性を検証した。<br>【方法】 本研究に対し説明し、書面にて同意の得られた9人(平均年齢25.9歳)の健康成人男性を対象に内蔵ブレンダーを有しないNPPV(BiPAP synchrony2)を使用し、フェイスマスク(ConfortGel Blue)を装着した。FiO2は、Oxgen moniter(MiniOX3)を使用し、フェイスマスク直前に接続した。SpO2は、パルスオキシメーター(PULSOX-300)にて測定した。NPPVは、IPAP12, EPAP4, STモード、換気回数15回/分、フローは1秒に設定した。呼吸介助実施と非実施の2条件に対し、室内気(以下RA)、1, 2, 3, 4, 5L/minの酸素を添付し、計12条件を測定した。酸素は、NPPVの送気口直後にTコネクターで接続した。被験者は背臥位とし、RAにてNPPV装着し5分間の安静呼吸の後に、ランダムに選びだされた条件下にて2分経過した後のFiO2、SpO2、TV、平均リーク、呼吸回数の測定と呼吸困難感の評価を実施した。呼吸困難はVASにて評価した。各データの解析はSPSS(Dr. SPSS 2)にて行った。多重比較検定はTukey検定を行い、有意水準(危険率)はp=0.05もしくはp=0.01とした。<br>【結果】 呼吸介助によって、TVは3L/min条件下を除き、有意に増加させた(p<0.01)。酸素流量の変化によってTVは、呼吸介助実施と非実施ともに差を認めなかった。酸素流量の上昇によるFiO2の変化として、3L/min以下の条件においては、呼吸介助実施と非実施ともに有意な上昇を認め(p<0.01)、なお且つ、両者に差は認めなかった。一方、呼吸介助非実施での4L/minと5L/min条件間のFiO2に有意な上昇は認めず(p=0.85)、4L以上の条件では、一定の傾向は得られなかった。呼吸介助はすべての条件下で呼吸困難感を悪化させなかった。<br>【考察】 本研究結果から、呼吸介助は3L/min以下の条件において、FiO2を変化させない事が示された。4L/min以上の条件において一定の傾向は明らかとなっていないが、我々は事後研究として、本研究と同条件のNPPVとTest lungにおいて、FiO2を900秒間モニタリングした所、添付された酸素の流量が多いほど、FiO2の安定に時間を要し、5L/min条件下での安定には255秒程度必要であることを確認した。呼吸介助非実施の条件における各酸素流量の多重比較検定において、4L/minと5L/minの間に有意差を認めなかった事からも、測定方法の検討が必要と考えられる。<br>【まとめ】 本研究結果より、3L/min以下の酸素を添加した内蔵ブレンダーを有しないNPPV使用患者に対する呼吸介助の安全性を示す根拠の一つが示された。4L/min以上における安全性の検討の為には、対象者数を増やす事や測定方法を検討する必要がある。

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