胸椎代償運動を除いた頚椎運動と頸椎深層屈筋機能との関係
書誌事項
- タイトル別名
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- 頚椎伸展-屈曲テストと頭頸部屈曲テストを利用して
説明
【目的】頸椎深層屈筋群の評価は、Jullらによって報告されている頭頚部屈曲テストがあり、アウトカムの尺度としても適していると言われている。しかしこの評価を行うためにはStabilizerというプレッシャーバイオフィードバック器具が必要となる。我々は器具を使用しない頸椎深層屈筋群評価法を開発することを目的に、胸椎の代償を制御しながら頚椎の最大伸展位から正中位への屈曲運動を評価する、頚椎伸展―屈曲テストを考案した。我々が行った先行研究(2010ACPT)では、頚椎伸展―屈曲テストで正中位に戻すことが不可能な健常女性12名に3週間の頚椎深層屈筋トレーニングを行った結果6名が可能となり、頚椎深層屈筋群との関連があると考えた。また我々は頭部重量や頸部長など骨格的な影響を検討する為、作田ら(1990)が開発した頭重負荷指数評価(頭部周径R、頚部周径r、頚部長Lとし公式index=R3・L/r2/1000に当てはめる)において頚椎伸展―屈曲テストによる可能・不可の群間比較をしたところ、頭重負荷指数の差はみられず頭頚部形態の与える影響は無かったと考えた(2011日本理学療法学術大会)。しかし先行研究では頸椎表層屈筋群の影響や、徒手筋力検査(MMT)との違いを検討することは出来ていなかった。本研究の目的は、頚椎伸展―屈曲テストと頸椎深層屈筋群の機能評価である頭頚部屈曲テストとの関係を、MMTの結果も含めて検討することとした。<BR>【方法】対象者は頚椎疾患の既往の無い健常女性で、28名(平均年齢30±8歳)であった。頚椎伸展―屈曲テストは、検者による肩甲骨内転強制により胸椎屈曲運動を制限しながら、被験者に頚椎を最大伸展位から屈曲させ正中位に戻せるかを評価した。この時肩甲骨外転を伴う胸椎屈曲代償運動や頸椎屈曲途中で運動の中断が見られた場合は不可とした。頭頚部屈曲テストはJullらの方法を参考にTYATTANOOGA社製Stabilizerを背臥位の被験者の頸部下に置き、基準値の20mmHgになるまで圧力センサーに空気を入れ、上下の歯を噛み合わせず舌を口蓋上部に軽く当てるよう指示した。この状態で頭部のうなずき動作を行うよう指示し基準の20mmHgから最大の30mmHgまで2mmHg間隔で5段階の目標値に合わせ、その位置を10秒間保持できるかをテストした。検者は頸椎表層屈筋群の収縮を触診し、優位な収縮がみられた場合は不可と判断した。また頸椎深層・表層屈筋群の粗大筋力評価としてMMTの頭頸部・頸部屈曲筋力をテストした。テストは全て筆頭演者本人が行った。統計は、頭頚部屈曲テストの群間比較にt検定、MMTの群間比較にマン・ホイットニのU検定を用い、有意水準を危険率5%未満とした。この研究は対象者にヘルシンキ宣言に基づき説明し、文書にて承諾を受けた上で行った。<BR>【結果】頚椎伸展―屈曲テストの結果、正中位まで屈曲可能だった群(可能群)は15名(平均年齢31±8歳)、不可だった群(不可群)は13名(平均年齢29±9歳)であった。頭頚部屈曲テストの圧センサー値平均は可能群27.6±3.6mmHg、不可群23.4±4.7mmHgであった。頭頚部屈曲テストにおいて不可群は可能群に比べ圧センサー値平均が有意に低かった(p<0.05)。またMMTにおいては可能群と不可群に有意な差はみられなかった。<BR>【考察】Jullらは、頭頚部屈曲テストにおいて頸部に痛みの無い人では26~28mmHgまでは出来ると思われると述べている。今回の結果では頚椎伸展―屈曲テストの不可群において頭頚部屈曲テストの圧センサー値平均が23.4mmHgと比較的低値を示し、頸部深層屈筋群の機能低下が示唆された。しかし頭頸部屈曲MMTにておいては可能・不可の群間に差がみられないことから、MMTではこのような差を鑑別することは難しいと考えた。また頸部屈曲MMTでは差がみられないことから頸部表層屈筋群の影響は無かったと推察した。現在健常者を対象に研究を行っているが、健常者においても正中位まで屈曲不可能なケースがあることは興味深く、むちうち損傷等の傷害予防も含め今後臨床応用を検討したい。しかし、本研究では頭頚部屈曲テストにおいて頭頸部の動きの評価や触診など主観的評価の要素も多かったこと、筆頭演者が検者であったことなど、客観性に課題もあったと考えた。今後は他の検者による評価や、筋電図や超音波を用いた頸椎屈筋群の収縮の評価など、より客観性の高い研究を発展的に行いたい。また不可群の中には頭頚部屈曲テストで問題の無かった被験者もおり、今後姿勢アライメントや体幹機能との関連についても検討したいと考えている。<BR>【まとめ】頸椎のアプローチにおいて重要とされている頸椎深部屈筋群の簡便な評価の開発は臨床において有益と考える。我々の考案した頚椎伸展―屈曲テストにおいて、可能・不可の群間で頭頚部屈曲テスト結果に差がみられ、頸椎深部屈筋群の評価として活用できる可能性が示唆された。
収録刊行物
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- 東海北陸理学療法学術大会誌
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東海北陸理学療法学術大会誌 27 (0), 16-16, 2011
東海北陸理学療法学術大会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680643322368
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- NII論文ID
- 130007005729
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可