若年者と高齢者の立位での有効支持基底面

Search this article

Description

【目的】高齢者に多い三大骨折として、大腿骨頸部骨折と脊椎圧迫骨折、橈骨遠位端骨折があげられる。その受傷機転のほとんどは転倒であり、加齢に伴うバランス保持能力の低下が関係すると考えられている。バランス能力の一つの指標として、立位において身体を傾斜させ足を踏み出さずにその姿勢を保持できる位置(姿勢保持限界点)が検討されてきた。その結果、高齢者は若年者に比べ、前後方向の姿勢保持限界点が狭いことが明らかとなっている。しかし、前後方向以外の姿勢保持限界点についての検討はほとんどなされていない。そのため、本研究では、前後方向に加え左右方向と斜め方向の姿勢保持限界点についても測定し、姿勢の保持が可能な範囲(有効支持基底面)を若年者と高齢者で比較した。<BR> 【方法】本研究は豊橋創造大学生命倫理委員会の承認を得て実施された。全ての被験者に対し研究の概要を説明し書面による同意を得た後に実験を実施した。被験者は43 名の大学生(若年者群)と43 名の高齢者(高齢者群)であった。若年者群と高齢者群は、ともに女性28 名と男性15 名であった。年齢の範囲は、高齢者群が65歳から79 歳であり、若年者群が19 歳から22 歳であった。被験者が下肢荷重計上で裸足にて立位を保持した状態で全ての測定を実施した。下肢荷重計により、立位保持時の前後方向および左右方向の足圧中心位置(それぞれCoPx 位置とCoPy 位置とする)を測定した。最初に安静立位位置(安静位)におけるCoPx とCoPy を測定した。次に姿勢保持限界点における CoPx とCoPy を測定した。姿勢保持限界点は、前方と後方、左方、右方、前左方、前右方、後左方、後右方の計8方向とした。各姿勢保持限界点における足圧中心位置を直線で結ぶことで各被験者の有効支持基底面の面積を算出した。支持基底面の面積に対するパーセンテージで有効支持基底面の面積を表した。<BR> 【結果】有効支持基底面の面積は、若年者群で47.4 ± 6.3%、高齢者群で36.5 ± 8.5%であり、高齢者群の面積は若年者群よりも有意に狭かった。前3方向(前方と前左方、前右方)と後3方向(後方と後左方、後右方)の姿勢保持限界点では、いずれのCoPy 位置にも被験者群間の有意な差が認められ、高齢者群は若年者群に比べ、前3方向のCoPy 位置が有意に後方、後3方向のCoPy 位置が有意に前方であった。横方向(左方と右方)における姿勢保持限界点では、いずれのCoPx 位置にも被験者群間の有意な差が認められ、高齢者群は若年者群に比べ、より内側であった。前3方向のCoPy 位置の分散には、両被験者群間の有意な差は認められなかった。しかし、後3方向のCoPy 位置と横方向のCoPx 位置の分散には被験者群間の有意な差が認められ、いずれも若年者群よりも高齢者群で分散が大きかった。<BR> 【考察】高齢者群の有効支持基底面の面積は、若年者群と比べて有意に狭かった。本研究では8方向の姿勢保持限界点を検討したが、そのいずれにおいても若年者群と高齢者群で有意な差が認められた。これらの結果は、高齢者群における有効支持基底面はある一定の方向でなく全体的に狭くなっていることを示唆している。有効支持基底面が狭いということは、足を踏み出さずに姿勢を保持できる範囲が狭くなっていることを意味しており、このことは高齢者におけるバランス能力低下の一因であると考えられる。しかし、加齢による有効支持基底面の減少には個人差が大きいことも示唆された。<BR> 【まとめ】高齢者の有効支持基底面は若年者に比べて減少しているものの、その減少の程度には大きな個人差が認められることが示唆された。

Journal

Details 詳細情報について

Report a problem

Back to top