小脳梗塞を呈した症例

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【はじめに】 今回、小脳梗塞により体幹失調を呈した症例を外来通院にて担当し、自分の理学療法を振り返る機会を得ることができたのでこれを報告する。<br>【症例紹介】 本症例A様は既往歴に心筋梗塞、糖尿病、高血圧があり、平成19年9月に脳梗塞を発症し左不全麻痺、頻脈を呈した50歳代の男性である。平成24年3月に右小脳梗塞を発症し当院入院、3月に退院となるがふらつきが残存、主訴は歩きにくい、Needはもっとよくなりたい、復職に向けて自主運動を習得したいとのことで平成24年4月より外来にて週2回の理学療法開始となった。ADLは自立、独力で通院可能であり歩行においても補助具は使用せず可能な状態であり、2週間後に復職する予定であった。<br>【理学療法評価】 認知症、高次脳機能障害は見られず、Brunnstorm recovery stage左手指 stage6、左上肢 stage6、左下肢 stage6、左手関節より遠位、足関節より遠位にて重度感覚鈍麻がみられ体幹協調性試験ではstage3であった。MMTでは左<右にて若干の差を感じる程度で上肢、下肢ともに4であった。可動域は問題なし、開眼片脚立位時間は左20.44秒、右4.11秒であった。<br>【理学療法および結果】 評価より、小脳梗塞による体幹失調がふらつき、歩きにくさの主たる原因とし、感覚障害の影響も考慮し、体幹失調に対するアプローチを中心に感覚障害がみられる右下肢にもアプローチした。体幹に対して床上動作練習を中心にブリッジ、kneeling、四つ這いなどを行った。右下肢に対しては神経・筋再教育などを行った。2か月の施行の結果、開眼片脚立位時間において左1分7.15秒、右8.22秒の改善がみられ、「ふらつきが減り、歩きやすくなった」とのことであった。その他の検査において変化は見られなかった。<br>【考察】 復職が目前に迫っており、自主運動の習得のために速やかな障害の特定と問題の抽出を重視し、疾患、動作、既往歴から体幹失調および片麻痺、感覚検査を中心に評価、理学療法を施行した。ご本人の希望もあり結果的に2ヶ月間の介入期間となり片脚立位時間において改善がみられたものの他の評価項目に変化が見らないことから主訴に対して状態が改善したというデータが得られなかった。<br>【まとめ】 当初の予定では3回程度の介入予定であったため効果判定としてのパフォーマンステストは必要ないと判断した。しかし、今回のケースように目標や介入期間の変更に応じ必要な評価を追加するべきであり、パフォーマンステストの重要性を再確認した。そこでSingle Side Step Test(以下SSST)に着目した。SSSTは最大サイドステップ長を測定する側方への動的バランス評価法である。簡便で歩行能力との相関が高いことが示されており、脳卒中、地域高齢者の運動能力と最大サイドステップ長について検討されておりサイドステップ動作の身体運動学的要素から整形疾患においても有効であると考える。そこで今後はSSSTを基本評価として取り入れ他のパフォーマンステストとの比較検討を行い、バランス能力の研究として取り組んでいきたい。

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