当院における終末期リハビリテーションへの係わり
この論文をさがす
説明
【はじめに】〈BR〉当院では、医師をはじめ、訪問看護師が、終末を在宅でと希望する患者や利用者と家族の支援を可能な限り実践している。その中には、訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)で終末期に理学療法士(以下PT)が係わるケースも存在する。〈BR〉今回我々は、理学療法士がほぼ同時期に2例の終末期に係わるケースを経験し、1例目は在宅死、2例目は在宅死を希望しながらも最終的に病院死となった症例について若干の考察を加え報告する。尚、症例については、家族の同意を得ている。〈BR〉【当院における臨死教育】〈BR〉当院では、訪問看護ステーションに於いて、在宅での看取りを希望する場合、パンフレットを活用し利用者家族の不安を解消する取り組みを行っており、死後は、エンゼルケアやグリーフケアも行っている。また、併設する通所リハビリ・通所介護でも利用者に対し、いずれ自分にも訪れる「死」を意識した臨死教育の取り組みを行っている。〈BR〉【症例1】〈BR〉 90歳代女性 要介護5 主介護者:娘 約20年前脳梗塞発症、その後脳梗塞を再発し訪問看護、訪問リハ、通所リハ、ショートステイ、訪問介護などのサービスを利用しながら在宅生活を継続していた。〈BR〉理学療法プログラムは、関節可動域維持、車いすトランスファー、坐位保持、ポジショニングを行っていた。〈BR〉【経過】 平成22年12月初旬、在宅で意識レベル低下、医師往診の結果脳梗塞の再々発で、ターミナルと判断、家族に説明し今後の意向を聞いた所、「静かに在宅で看取りたい」との希望で、具体的には、必要最小限の医療行為で対応する事、訪問リハ、看護は継続して欲しいとの事であった。亡くなるまでに2度訪問リハを実施、最後の訪問リハでは、マニュアルコンタクトや関節可動域運動を行いながら、家族から本人の思い出話や、遺影の写真をどれにするか等の話を傾聴した。家族も長年に渡り献身的に介護をしてきた事もあり母親の死を受け入れる準備が出来ている様子が伺えた。〈BR〉【症例2】(BR) 60歳代男性 要介護5 主介護者:妻 平成19年両側小脳及び両側後頭葉梗塞発症、両側難治性乱視、両側同名半盲にて訪問リハ、訪問看護、通所リハ、訪問介護を利用し在宅生活していた。〈BR〉理学療法プログラムは、関節可動域維持、協調性運動、基本動作練習、介助での歩行器歩行を行っていた。〈BR〉【経過】 平成22年2月 肺癌の診断を受ける。その時点で、本人と家族には告知される。診断の結果を受けサービス担当者会議開催、本人は自宅で最期を迎えたいと希望あり、家族も本人の願いを叶えたいとの意思を確認、症状が悪化するまでは現状のサービスを継続する事が確認された。8月には嗄声が出現、10月には胸部痛と疲労感、食事量、水分摂取量が減少してくる。10月末、呼吸困難感出現し点滴など医療行為が増えた為、訪問リハが一時中止となるが、本人の希望で11月は不定期で訪問リハ再開となる。その理由は、理学療法士の訪問で、精神的不安の解消、関節拘縮の予防、呼吸困難感の軽減の為であった。12月初旬、呼吸困難感と訪問看護師への緊急コール頻回となり、在宅生活は介護負担から困難と医師が判断し入院となり約1週間後に死亡となる。PTが面会に行った時には妻から「苦しそうで見ていられなかった、最期を在宅でと希望していた本人には悪いが、病院に入院して安心した」との話を伺った。〈BR〉【考察】〈BR〉理学療法士は、医師や看護師の様に臨終の場面まで係わる事は無い。しかし、理学療法士の用いる技術が終末期の患者(利用者)のQOL向上に貢献できる事もある。太田は、終末期リハビリテーションの具体的目標として8つの項目を提唱している。今回の症例に於いても、チームで具体的目標に沿った対応を行った。本症例は、終末期以前からの係わりであり、本人や家族との関係も構築できていた為、終末期訪問リハの最大の効果は、本人または家族の不安解消であったと考える。また本人や家族が、死期を理解していても、関節可動域の維持や動作能力の維持を行う事は、人間としての尊厳を保つ為にも重要であったと考える。〈BR〉症例2に於いては、本人は最後まで在宅で過ごす事を望んでいたが、呼吸困難感が出現する病状で苦しさを目の当たりにする為、介護者の不安と負担が増してしまい本人の希望に添えず病院で最期となった。在宅では、家族で過ごす時間が増える半面、医療スタッフが常にいる環境にない為、最終的には家族の意向に沿う対応が必要である事を感じた。千葉も在宅で最期を迎える為には、本人と家族の思い、実際の病状と介護力がかみ合わないと看取りは難しいと述べている。〈BR〉今回の症例を通して経験させて頂いた事を今後の終末期リハへの係わりに役立てていきたい。
収録刊行物
-
- 東海北陸理学療法学術大会誌
-
東海北陸理学療法学術大会誌 27 (0), 26-26, 2011
東海北陸理学療法学術大会
- Tweet
キーワード
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390282680643490560
-
- NII論文ID
- 130007005883
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可