静岡県理学療法士会による新人理学療法士の卒後教育,職場に対する満足度調査
書誌事項
- タイトル別名
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- ~現状は希望と不安が共存する~
抄録
【目的】医療技術の進歩にともなって死亡率が減少する一方で,障害が重度化し,延命治療の進歩から平均寿命が高まっている.また日本は長寿世界一,かつ世界に類をみない速度で超高齢社会へと突入した現状を考えると,今後の理学療法のさらなる知識,技術などの発展は不可欠であると考える.現在,日本の理学療法士の実数は,世界理学療法連盟(World Confederation For Physical Therapy: WCPT)の会員数から推定すると,アメリカに次いで,世界第2位の会員数を誇っている.一方で,会員数の増加は,1998年で2万人,2009年で5万人と急増を示していることから,若年化を基盤に日本の会員数が増加しているのが現状である.静岡県理学療法士会の在会数も2010年度末現在で1800人を超え,若年化が進んでいるのは否めない.したがって新人理学療法士の卒後教育のさらなる体制化の重要性が伺える.そこで今回,卒後教育の発展の一助として,まず新人理学療法士が院内・院外の卒後教育をどのように感じ,考えているかをアンケート調査したため報告する.なお本アンケートは,静岡県理学療法士会理事会の承認を得て実施した. 【方法】対象は,本県士会に在会する1~3年目の新人理学療法士130名である.男性80名(61%),女性50名(38%),年齢は26±4歳である.経験年数は,1年目が40名(30%),2年目が53名(40%),3年目が37名(28%)を占めた.1名の無回答があった.アンケートはWeb上で実施した.質問項目は,年齢などを含め,「部署内勉強会の合計時間」,「院外勉強会の参加頻度」,「卒後教育(院内・院外を含む)に対する満足度」,「業務を忙しく感じますか」,「残業時間」,「職場に不安はありますか」,「理学療法士という仕事に魅力を感じますか」,「理学療法士の将来像に不安を感じますか」など全22項目とした.設問の形式は,多肢選択法とSD法(semantic differential method)を用いた.SD法は5段階評価とした.さらに「職場に不安はありますか」では,要因検討のため自由回答法も実施した. 【結果】 「部署内勉強会の合計時間」は,1~3時間/月が67名(51%),4~6時間/月が37名(28%)であった.「院外勉強会の参加頻度」は,1~3回/月が85名(65%),0回/月が42名(32%)であった.「卒後教育に対する満足度」では,どちらともいえないが約50%を占め,満足・不満はほぼ同数であった.「業務を忙しく感じますか」では,忙しく感じている者が64名(48%),どちらともいえないを含め103名(約80%)を占めた.「残業時間」は,1~3時間が約80%であった.「職場に不安はありますか」では,不安を感じている者が62名(47%),どちらともいえないを含め106名(80%)を占めた.「理学療法士という仕事に魅力を感じますか」では,魅力を感じている者が98名(74%),どちらともいえないを含め118名(約90%)であった.「理学療法士の将来像に不安を感じますか」では,不安を感じている者が,83名(62%),どちらともいえないを含め116名(約90%)を占めた.「職場に不安はありますか」の理由として,治療に対する不安が多く,若手の多い職場または一人職場のため指導者からの治療に対するフィードバックができないことが挙げられた. 【考察】今回,仕事に魅力を感じている者が,98名(74%)と過半数を占めた.一方で将来像に不安を感じている者が,83名(62%)であったことから,多くの新人理学療法士が希望とともに日常業務で不安を抱えていることが明らかとなった.不安の要因として,本アンケートでは卒後教育という観点から検討した.そこで特に新人理学療法士は職場での治療に対する教育の不安を感じていた.詳細の内容として,「若手の多い職場のため指導者がいない」や「一人職場で指導者がいない」など治療に対するフィードバックを受けることができないことが挙げられた.日本での理学療法士の数の急増や職域の拡大にともなう職場の若年化や新人理学療法士の1人職場が増加しているためであろう.一方で「卒後教育に対する満足度」ではどちらともいえないが約50%を占めた.これは「業務を忙しく感じますか」で,忙しく感じている者が64名(48%)であり,また「院外勉強会の参加頻度」が,1~3回/月が85名(65%),0回/月が42名(32%)を考慮すると,治療に対する不安はあるが,日常業務に追われている現状も示唆された. 【まとめ】新人理学療法士は,仕事に希望と不安を共存し,不安の要因の1つとして,治療に対する教育が挙げられた.本県士会では,今後さらなる病院間での連携や業務後でも参加が可能な地域単位での共同勉強会などを促し,先輩理学療法士,新人理学療法士間での交流の場を増やす必要性を感じた.
収録刊行物
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- 東海北陸理学療法学術大会誌
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東海北陸理学療法学術大会誌 27 (0), 89-89, 2011
東海北陸理学療法学術大会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680643650944
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- NII論文ID
- 130007006027
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可