外反母趾にそれぞれ後脛骨筋腱炎と腓骨筋腱炎を合併した2例

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説明

【はじめに】<BR>  外反母趾に、それぞれ後脛骨筋腱炎、腓骨筋腱炎を合併した2例を経験したので、その疼痛発生メカニズム及び足底挿板療法について報告する。<BR> 【症例供覧及び初診時所見】<BR> 症例1:40歳代男性、当院にて右外反母趾、右後脛骨筋腱炎と診断された。母趾中足趾節間関節(以下母趾MTP関節)、後脛骨筋腱に疼痛が認められた。荷重時レントゲンでは、横倉法はすべての値において低下しており、前足部は開張足傾向であった。歩行時フットプリント及び歩行観察では、踵骨は回内接地し、内側縦アーチ及び前足部横アーチの低下が認められ、母趾での蹴りだしは減弱していた。<BR> 症例2:50歳代女性、当院にて左外反母趾、左腓骨筋腱炎と診断された。母趾MTP関節、長腓骨筋及び腱に疼痛が認められた。荷重位レントゲンでは、横倉法はすべての値において低下しており、前足部は開張足であった。歩行時フットプリント及び歩行観察では、踵骨は回外接地していた。一方、前足部横アーチは低下していた。また、圧の集積像を第2、3、5中足骨頭部および第4、5足趾に認め、母趾の荷重は不十分であった。<BR> 【足底挿板の作製】<BR> 症例1:舟状骨パッドに加え、中足骨パッドを載距突起下に貼付した。前足部に対しては、母趾MTP関節における機能的安静を目的に、母趾MTP関節を越えて中足骨パッドを貼付し、併せて前足部横アーチを保持した。<BR> 症例2:中足骨パッドを踵骨後外側に貼付し、そのカウンターとして舟状骨パッドを貼付した。前足部に対しては、症例1と同様に中足骨パッドを貼付した。<BR> 【結果及び考察】<BR>  症例1は、母指内転、回外不安定性が契機となった外反母趾に、踵骨を含めた後足部の回内不安定性を伴ったケースである。後足部回内不安定性の制動として、後脛骨筋が過剰収縮したことが疼痛の原因と考えた。足底挿板は、踵骨の回内制動、内側縦アーチの保持にて、後脛骨筋の過剰収縮を抑制させることが目的となる。加えて母指MTP関節における運動性を制御することによる、MTP関節自体の安静保持を目的として、母趾MTP関節を越えた位置まで中足骨パッドを貼付した。最後に、母趾中足骨の外転・回外モーメントの軽減を目的に、前足部横アーチを保持した。症例2における症例1との大きな違いは、踵接地時に回外位で接地する事である。この現象は、母指の疼痛を回避するための重心の外側シフトが原因と考えられた。これはフットプリントにおける第4・5趾の圧集積からも、立脚期全般を通して重心が外側優位である事が伺える。後足部の回外接地から続く外側優位の重心軌跡は、踵骨の回外不安定性に伴う長腓骨筋の持続的な過剰収縮を惹起し、疼痛が出現したと考えた。足底挿板は、踵骨の回内誘導とともに直立化を保持し、症例1と同様な前足部の処置により、長腓骨筋ならびに母趾の疼痛が消失したと考えられた。

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