伏在神経の絞扼部位に関する解剖学的検討
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抄録
【はじめに】<BR> 伏在神経は膝関節周囲の感覚を司る神経の一つであり,本神経の絞扼によってその支配域に感覚障害が生じる.本神経の絞扼部位については既に報告が見られるが,周囲組織との位置関係を詳細に記述したものは少ない.今回,膝関節周囲の詳細な肉眼解剖学的観察を行い,伏在神経の絞扼部位に関する新たな知見を得たので報告する.<BR> <BR> 【対象と方法】<BR> 愛知医科大学医学部『解剖セミナー』に供された解剖実習用遺体10体14側を対象とした.大腿動静脈と共に内転筋管内を走行し,内転筋管を出た後に下腿内側に向かって走行する伏在神経を同定した.内転筋管およびその周囲において,伏在神経と周囲組織(大腿動静脈,大内転筋腱,広筋内転筋板,縫工筋など)との位置関係を詳細に観察した.<BR> <BR> 【結果】<BR> 全例(14側)で,伏在神経は内転筋管内において大腿動静脈と交叉し,内転筋管を出た直後に大内転筋腱と交叉していた.内転筋管内およびその出口部は,筋と厚い線維性組織である広筋内転筋板に囲まれた狭い部位であった.<BR> また,伏在神経から分岐して膝蓋骨下方へ向かう枝(以下;膝蓋下枝)は,14側中5側では内転筋管内において分岐して広筋内転筋板を貫通し,9側では内転筋管を出た後に分岐していた.さらに,膝蓋下枝は,14側中12側では縫工筋を貫通し,2側では縫工筋の後側を迂回していた.縫工筋を貫通あるいは迂回する際に大きく走向を変えていた.<BR> <BR> 【考察】<BR> 伏在神経は,内転筋管内の大腿動静脈交叉部位および大内転筋腱交叉部位において,解剖学的に狭い構造内部で血管および腱と交叉していた.また,膝蓋下枝が厚い線維性組織である広筋内転筋板を貫通する例が観察された.さらに膝蓋下枝は,縫工筋を貫通あるいは迂回する部位で走向を大きく変えていた.これらの部位は,過去に報告されている絞扼部位に加えて,伏在神経が絞扼される可能性が高い部位であると考えられた.
収録刊行物
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- 東海北陸理学療法学術大会誌
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東海北陸理学療法学術大会誌 25 (0), 157-157, 2009
東海北陸理学療法学術大会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680645152128
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- NII論文ID
- 130007006907
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可