座位における座角別骨盤角度の抽出

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説明

【目的】<BR>座位での作業は椎間板への負担が大きく、腰痛の発生率も高い。しかし、椅子と座位姿勢との関連性をみた報告は少ない。そこで、今回は座角と骨盤傾斜角度に着目し、座角の角度調節で、骨盤傾斜角度の前後傾を促せるかを検討したので、ここに報告する。<BR>【方法】<BR>対象は特筆すべき疾患を有さない健常者11名(男性5名、女性6名)で、年齢30.2±2.8歳、身長160.4±2.4cm、体重52.8±1.9kg、BMI20.5±0.6kg/m2。対象者には書面にて研究の趣旨と方法を説明し同意後、測定を実施した。測定は自作の木製の座面上に、楽な姿勢で足底が床に接地するよう、端座位をとらせた。座角は1)後傾10度、2)後傾5度、3)水平0度、4)前傾5度、5)前傾10度の5条件とし、5条件の座角はランダム化処理した。椅子の前座高は常に脛骨上縁と一致するよう、高さを調節した。また、座面の奥行きは下腿後面と座面前部に2横指の隙間ができるよう調整した。真島らの先行研究を参考に、左側の上前腸骨棘と大転子にランドマークをつけ、両点を結んだ線と大転子を通る水平線とのなす角度を骨盤傾斜角度とし、水平器をつけた角度形を用いて安楽位の骨盤傾斜角度を測定し、角度形の中心を大転子の中心にあて、測定値は5度単位で読み取った。統計処理は、分散分析(ANOVA)と多重比較(Dunnett法)によって、有意差の検定を行った(P<0.05)。<BR>【結果】<BR>全ての座角別骨盤傾斜角度に、男女差は認めなかった。安楽座位での骨盤傾斜角度は、水平0度92.3±9.3°に対し、後傾10度103.2±8.1°でP<0.01で有意差を認めた。しかし、水平0度92.3±9.3°に対し、後傾5度96.8±9.3°,前傾5度90.5±9.6°,前傾10度89.1±11.6°では有意差を認めなかった。<BR>【考察】<BR>安楽座位での骨盤傾斜角度は、座角が水平0度に対し、後傾10度で骨盤は有意に後傾した。しかし、水平0度に対し、後傾5度,前傾5度,前傾10度では有意差は認めず、後傾10度以外では、座角が前傾すると骨盤はわずかに前傾し、座角が後傾すると骨盤は後傾する傾向のみ認めた。これらは、座位は体幹に働く重力が骨盤に加わり、骨盤が後方に回旋する傾向を持ちやすいことや、股関節が屈曲位となるため腸腰筋が緩み、腰椎伸展,骨盤前傾作用が減少する事などが、骨盤が前傾しにくい理由として考えられた。また、座角を前傾しても骨盤を後傾し、円背位で屈曲弛緩現象を出現させる例も認めた。骨盤が前傾位では、脊柱起立筋の疲労負担は避けられず、骨盤後傾位では、動作時に椎間板内圧を高め、筋の阻血状態を来し、腰痛出現の要因になりかねない。本研究で、座角の傾斜では、適切に骨盤の前後傾を促せないことが示唆された。ADLで適切に安楽な座位を促すには、椅子と身体との関わりを今後も検討していくことが必要と思われた。

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