ロフストランド杖による後骨間神経の圧迫部位に関する解剖学的検討

DOI
  • 村瀬 政信
    医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科 愛知医科大学医学部 解剖学講座
  • 鳥居 亮
    医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科 愛知医科大学医学部 解剖学講座
  • 遠山 裕之
    有限会社 遠山義肢装具
  • 浅本 憲
    愛知医科大学医学部 解剖学講座
  • 中野 隆
    愛知医科大学医学部 解剖学講座

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抄録

【はじめに】<BR>  松葉杖の圧迫による腋窩神経麻痺の症例は多く報告されているが,ロフストランド杖(以下,L杖)による後骨間神経麻痺に関するものは少ない.われわれは昨年の本学術大会で,L杖を前腕回内位で使用した場合,後骨間神経が回外筋の浅層と深層の間を貫通する部位(以下,『回外筋貫通部位』)において,L杖の前腕カフと橈骨の間で圧迫される可能性があることを報告した.今回,『回外筋貫通部位』をより詳細に観察したので報告する.<BR> 【対象】<BR>  愛知医科大学医学部解剖セミナーに供された解剖実習用遺体8体14肢(右側7肢・左側7肢)を対象とした.<BR> 【方法】<BR>  前腕回内外中間位において,肘関節外側裂隙と橈骨茎状突起端を結ぶ線を線分LS,その長さをlとした.前腕の近位部に,線分LSを中心線として幅が4cm,長さがlの1/3である長方形の「外側領域」を設定した.さらに,「外側領域」に隣接して掌側と背側に,「外側領域」と同寸大の「掌側領域」および「背側領域」を設定した.その後,前腕の局所解剖を行い,『回外筋貫通部位』が「外側領域」,「掌側領域」,「背側領域」のいずれに位置しているかを調査した.なお,解剖の実施にあたっては愛知医科大学医学部解剖学講座教授の指導の下に行った.<BR> 【結果】<BR>  『回外筋貫通部位』は,肘関節から前腕近位1/3の間にあり,全例で「外側領域」に位置していた.そのうち「外側領域」のみに位置していた例は10肢であり,他は「外側領域」のみならず,「掌側領域」または「背側領域」にも僅かに及んでいた.<BR> 【考察】<BR>  『回外筋貫通部位』は,全例で「外側領域」に位置していた.したがって,肘関節から前腕近位1/3の外側部は,後骨間神経が圧迫される可能性があると考えられた.臨床上,L杖の前腕カフがその部位を圧迫しないように指導することが必要であると示唆された.<BR>

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