左下腿開放骨折と中足骨骨折後の歩行開始時に生じた足関節前方部痛の一考察

DOI
  • 平工 将也
    医療法人 香徳会 関中央病院 リハビリテーション科
  • 赤羽根 良和
    さとう整形外科 リハビリテーション科
  • 永田 敏貢
    さとう整形外科 リハビリテーション科
  • 中嶋 愛
    医療法人 香徳会 関中央病院 リハビリテーション科
  • 服部 良
    岐阜大学医学部付属病院 リハビリテーション部

この論文をさがす

抄録

【はじめに】〈BR〉 今回,交通事故による多発外傷症例を経験した.荷重時に足関節前方部痛が出現した症例に対して理学療法経過と若干の考察を踏まえ報告する.〈BR〉【症例紹介】〈BR〉 症例は70代男性で,診断名は左下腿開放骨折,左第1中足骨脱臼骨折,左第2~5中足骨骨折である.合併症は右恥骨骨折,右下腿骨折である.受傷機転は歩行中に後方からの車による追突である.左下腿開放骨折と左第1中足骨脱臼骨折は他院にてピンニングによる手術となり、右恥骨骨折,右下腿骨折,左第2~5中足骨骨折は保存的に加療された.受傷3W後には車椅子可能となり、当院転院となる.〈BR〉【理学療法と経過】〈BR〉 転院後翌日よりギプス固定下で足趾自他動運動を開始した.術後6Wのギプス除去後では,足関節可動域背屈0°,底屈30°,回内外共に0°であり,長母趾屈筋(以下FHL)の拘縮を認めた.理学療法では足趾に加え足関節の自他動運動を開始した.両側PTB装着にて荷重開始したものの,左足関節前方部痛が出現したため,術後10W以降, FHLや後脛距靭帯,後距腓靭帯の拘縮除去を目的に愛護的に実施した.術後16Wでピンニング抜去し,術後17週で裸足全荷重可能となった.術後20W以降では足関節背屈20°,底屈40°,回内20°,回外20°と可動域拡大し,FHLや後脛距靭帯,後距腓靭帯の拘縮改善が得られた.また足関節前方部痛は消失し, T字杖にて自立可能となった.〈BR〉【考察】〈BR〉 足関節前方部痛の発生機序は,左下腿開放骨折や左中足骨骨折によりFHLの拘縮が生じ,距骨前方偏位を助長される。さらに、後距腓靭帯や後脛腓靭帯の拘縮により,足関節底背屈運動軸が後方位となり,MSにおいて脛骨下端と距骨滑車間隙でインピンジメントしたためと考えられる.理学療法では,ギプス固定中からの足趾自他動運動は有効とされているが,FHLの機能解剖に十分考慮して実施しないと,FHLに十分な伸張ストレスが伝わらない可能性があるため注意が必要である.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ