股関節運動が褥瘡創面形状に与える影響

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  • 創面離開を防止するため

抄録

【目的】高齢社会の日本にとって褥瘡は社会的に深刻な問題の一つである。その社会情勢に応えるがごとく,2005年9月に日本褥瘡学会より褥瘡局所治療ガイドラインが作成された。そして,この数年内にリハビリテーション分野も含まれたガイドラインが作成される予定である。そのため,理学療法分野においても褥瘡について研鑽を深めることは重要なことと言える。今回,股関節運動が褥瘡創面の形状に影響を与えた症例を経験したので以下に報告する。<BR> 【方法】対象は仙骨部にNPUAP(米国褥瘡諮問委員会;National Pressure Ulcer Advisory Panel)のStage分類IV度の褥瘡を有すパーキンソン症候群の患者1名。60cm2程の楕円形で,長径が頭尾方向と垂直である。下肢を(1)両股関節最大屈曲位,(2)両股関節最大伸展位,(3)左股関節屈曲・右股関節伸展位の三条件に設定し,3回/週を基準に2ヶ月間創面を評価した。評価方法は創面近傍にメジャーを貼付し,デジタルカメラにて創面を正面視した状態で撮影した。そして,撮影画像をImageJ(U.S.National Institutes of Health開発)を用いて処理し,面積,周長,閉長方形(長辺,短辺)を算出し,比較した。なお,患者及び患者家族に研究協力の同意を得て,個人が特定されないように配慮した。<BR> 【結果】(1):面積,周長,短辺で最高値ととる傾向が認められ,短辺で著明であった。(2):面積,周長,長径で最低値をとる傾向が認められ,長辺で著明であった。(3):長辺で最高値,短辺で最低値を示す傾向が認められた。<BR> 【考察】褥瘡治癒で認められる新生上皮は非常に脆弱な組織であるため,治癒過程で破綻してしまう所見がよく観察される。その破綻の一つとして,閉鎖した創面の離開が上げられる。本症例は新生上皮領域が少なく、サイズが大きいため離開は生じないが、創面が閉鎖直前の褥瘡では離開は褥瘡周囲の皮膚を牽引することで容易に発生する。今回の結果より,両股関節を屈曲すると創面が頭尾方向に牽引され,一側を屈曲,他側を伸展することで,頭尾方向と垂直な方向に牽引されることがわかった。それゆえ,それぞれの牽引方向に閉鎖してきている褥瘡を有す患者において,その牽引を引き起こす方向の関節可動域運動,あるいは両股関節屈曲を強いる座位保持運動は避けられるべきである。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680651272960
  • NII論文ID
    130007007366
  • DOI
    10.14902/kinkipt.2007.0.47.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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