人工股関節置換術後の杖歩行自立までの期間に関わる因子の検討

書誌事項

タイトル別名
  • -大腿骨頭壊死症と変形性股関節症の比較-
公開日
2011
DOI
  • 10.14902/kinkipt.2011.0.107.0
公開者
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック

説明

【はじめに】人工股関節置換術(以下,THA)は,股関節疾患患者の股関節機能の改善およびQOLの向上に対して有用な治療法の一つである.THAの対象となる股関節疾患として変形性股関節症や大腿骨頭壊死症があるが,これらの疾患では病態や罹患期間は異なる.このためTHA術後の歩行を中心としたADLの回復状況やこれらに関わる因子が異なることが予測される.しかし,THA術後の歩行の回復状況に関わる因子が原疾患により異なるかどうかを検討した報告はなく,不明な点が多い.そこで,本研究の目的は,THA術後の杖歩行自立までの期間に関わる因子が変形性股関節症や大腿骨頭壊死症で異なるかどうかを検討することとした. 【対象】大腿骨頭壊死症によりTHAを施行された26名(男性8名,女性18名,平均年齢:50.0±16.7歳,平均BMI:21.6±2.8kg/m2)と片側変形性股関節症によりTHAを施行された26名(男性4名,女性22名,平均年齢:58.3±12.1歳,平均BMI:22.9±4.7kg/m2)を対象とした.全例初回手術で術後荷重制限はなく,当院の術後プロトコール通りに理学療法を行い,術後4週で退院となった.手術のアプローチ方法は,全例において前外側アプローチであった. 【方法】術前の運動機能として,手術予定側の下肢筋力,歩行能力を測定した.下肢筋力の評価として,術側の股関節外転筋力,膝関節伸展筋力,脚伸展筋力を測定した.股関節外転筋力はHand-Held Dynamometer(日本MEDIX社製),膝関節伸展筋力および脚伸展筋力はIsoforce GT-330(OG技研社製)にて等尺性筋力を測定した.股関節外転筋力と膝伸展筋力はトルク体重比(Nm/kg),脚伸展筋力は体重比(N/kg)にて筋力値を算出した.また,歩行能力はTimed up and go test(以下,TUG)で評価し,歩行条件は杖無しで,できるだけ速く行うように指示した.各運動機能の測定はそれぞれ2回行い,筋力は最大値,TUGは最小値をデータ処理に採用した.さらにTHA術後経過として,初回離床時の介助の有無,術後から杖歩行自立までの期間を診療記録より後方視的に調査した.術後から杖歩行自立までの期間は,術日から病棟内での杖歩行を開始するまでの日数と定義した.統計処理には,術後から杖歩行自立までの期間と術前の各運動機能との関連性の検討にはピアソンの相関係数を用いた.さらに,術後から杖歩行自立までの期間を目的変数,術後から杖歩行自立までの期間と有意な相関関係を認めた運動機能,年齢,BMI,初回離床時の介助の有無を説明変数としたStepwise重回帰分析を行い,統計学的有意基準は5%未満とした. 【説明と同意】本研究は京都大学医学部の倫理委員会の承認を受け,各対象者には本研究の趣旨ならびに目的を詳細に説明し,研究への参加に対する同意を得て実施した. 【結果と考察】THA術後から杖歩行自立までの期間は,大腿骨頭壊死症患者で平均11.5±6.1日,変形性股関節症患者で11.0±3.6日であり,ほぼ同等であった.また,大腿骨頭壊死症患者の術後から杖歩行自立までの期間は,術前におけるTUG(r=0.39)とのみ有意な相関関係を認めたが,重回帰分析の結果からは術後から杖歩行自立までの期間を決定する因子は抽出されなかった.一方,変形性股関節症患者の術後から杖歩行自立までの期間は,術前におけるすべての運動機能(股関節外転筋力:r=-0.45,膝関節伸展筋力:r=-0.51,TUG:r=0.66)と有意な相関関係を認め,術前の下肢筋力が大きく歩行能力が高い症例ほど術後から杖歩行自立までの期間が短くなることが示された.さらに重回帰分析の結果から,術後から杖歩行自立までの期間を決定する因子として,術前のTUG(偏回帰係数:0.73,p<0.01),術後の初回離床時の介助の有無(偏回帰係数:3.42,p<0.01)の2つが有意な項目として抽出され,この回帰式の修正済決定係数はR2=0.64であった.以上から,変形性股関節症患者のTHA術後の歩行の回復状況を予測には,術前の運動機能はTUGおよび術後の離床時の介助の有無が重要であることが明らかとなり,THA術後早期のリハビリテーションに関わる理学療法士にとって有用な情報となることが期待された.一方,大腿骨頭壊死症患者に関しては,術前の運動機能や術後の離床時の状況から術後の歩行の回復状況を予測することはできなかった.今後の課題として,大腿骨頭壊死症患者の術後から杖歩行の自立までの期間に関わる因子を検討していくこと必要であると考えられた. 【理学療法学研究としての意義】THA術後におけるリハビリテーションを円滑に実施していくためには,術後の歩行の回復状況を予測しておくことが重要である.本研究の結果は,THA術後早期の理学療法を展開していくうえで有用な情報となることが期待され,理学療法学研究として意義のあるものと考えられた.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680651320320
  • NII論文ID
    130007007447
  • DOI
    10.14902/kinkipt.2011.0.107.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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