長期にわたりめまい、吐気を呈した小脳失調患者に対する理学療法の経験

Description

【はじめに】<BR> 小脳出血や小脳梗塞では、めまい、吐気、嘔吐を伴うことが多く、理学療法の早期介入の阻害因子となり訓練が難渋することが多い。今回、めまい、吐気、嘔吐を伴う小脳失調症状を呈する患者を担当し、退院時において歩行を獲得した症例を経験したので報告する。<BR> 【症例紹介】<BR> 平成18年8月9日、近隣病院来院時、意識レベル低下、頭痛、嘔気認め、MRIにて両側小脳半球出血性梗塞と診断された。同日、内外減圧術施行し症状改善認めたが、8月11日梗塞領域拡大、急性水頭症発症し再度内外減圧術施行、更に小脳一部除去術施行され、10月上旬当院転院となった。転院時、寝返り、起き上がり自立、立ち上がり、移乗、立位保持監視、歩行は平行棒内中等度介助であった。めまい、吐気はベッド上体位変換時や起き上がり時に著明に出現し、練習後に嘔吐を認めることもあり、積極的な理学療法は困難であった。協調運動機能は、踵膝試験、鼻指鼻試験にて左側優位に運動失調症状を認め、上肢よりも下肢に著明であった。また、躯幹協調ステージ2、機能的バランス尺度(以下FBS)34/56であり、筋力は下肢粗大筋力4レベルであった。<BR> 【経過】<BR> 理学療法開始当初から2週間程度は、めまい、吐気が著明であり、hip upやCKC下における下肢屈伸など臥位で行えるものを中心に行った。11月に入り、めまい、吐気の程度が軽減してきたため、臥位中心から四つ這いでの対側上下肢挙上、kneeling、立位バランス、歩行練習など抗重力位での運動療法へと徐々に移行した。また、下肢の協調性機能と持久性向上を目的として自転車エルゴメーターを開始した。歩行練習は平行棒内から開始し、T字杖、独歩へとすすめ、2月下旬よりトレッドミル歩行を開始した。病棟では1月上旬より日中院内T字杖歩行自立となり、徐々にADL向上が認められた。3月下旬の退院時、躯幹協調ステージ2であるも体幹動揺は軽度であり、下肢粗大筋力4~5レベル、FBS55/56と改善された。また、退院時に歩行は屋内独歩自立、屋外T字杖にて自立、屋内平地ではジョグが可能なレベルとなった。<BR> 【考察】<BR> 諸家によると、小脳に病変を有した患者において、めまい、吐気消失までの期間は約24日であり、全症例において消失している。本症例において、諸家の報告に比べめまい、吐気が長期に亘ったものの、症状の改善に従い歩行能力などに改善が認められた。これは、症状が著明な時期に廃用症候群の防止、改善に努めた結果、症状軽減に伴い抗重力位での運動療法に速やかに移行することができたため、バランス能力、下肢筋力が改善し、歩行時の失調による動揺が抑制された為と考える。さらに、トレッドミル歩行開始前では困難であったジョグが、退院時に可能となった事については、部分免荷トレッドミル歩行練習と同様、等速的な歩行の反復刺激により、運動学習が促通されたものと考える。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680651352576
  • NII Article ID
    130007007502
  • DOI
    10.14902/kinkipt.2007.0.67.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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