特定健診対象者に対する運動指導の必要性について

説明

【目的】<BR>2008年4月より生活習慣病の有病者・予備群の減少を目的とした、特定健診・保健指導が開始された。生活習慣病の予防と改善には、食事の改善だけでは無く、運動の実施が重要である。<BR>我々は、特定健診対象者の運動実施状況を把握し、運動指導の内容について下肢筋力、血管機能、運動習慣より検討した。<BR> 【対象】<BR>  奈良県内K町在住のアンケート調査に同意を得られた特定健診対象女性51名(平均年齢61.7±7.6歳)を対象とした。対象者は年齢により、55歳未満群(A群)、55歳以上65歳未満群(B群)、65歳以上群(C群)の3群に分類した。 対象者には事前に研究の主旨について説明した後、書面への署名によって同意を得た。<BR> 【方法】<BR>  下肢筋力は、膝伸展筋力と足趾把持力を測定した。膝伸展筋力は、ハンドヘルドダイナモメーター(アニマ社製、以下HDD)を使用した。測定肢位は、椅座位にて膝関節屈曲90度位で最大等尺性筋力を測定した。足趾把持力は専用の測定器にて測定した。双方ともに、全て2回測定したうちの最大値を採用し、体重で除して補正した(膝伸展/体重、足趾把持力/体重)。血管機能は、血圧脈波検査装置(VaSera VS-1000、フクダ電子社製)を用い、Cardio-Ankle Vascular Index(以下CAVI)を測定し、左右の平均値を算出した。統計処理は、一元配置分散分析とTukeyの多重比較検定を行った。有意水準は5%未満とした。運動習慣はアンケートにて、運動習慣、運動頻度、1回あたりの運動時間、筋力トレーニング等の高強度運動時間を調査し、χ2乗検定により比較、検討した。<BR> 【結果】<BR>  A群9名、B群20名、C群22名であった。足趾把持力/体重はC群0.11±0.38であり、A群0.19±0.05とB群0.16±0.06より有意に低下を示した(p<0.05)。CAVIはA群7.36±0.49に対しC群は8.18±0.72で有意に高値を示した。<BR>アンケート調査では、運動習慣、1回あたりの運動時間、筋力トレーニング等の高強度運動時間ともに3群間で有意差は認められなかった。しかし、運動強度は週1回以上の実施がA群44.4%に対しC群86.4%と高値傾向を示した(p=0.54)。<BR> 【考察】<BR>  65歳以上において、運動習慣や運動時間に有意な差を認めないにも関わらず、足趾把持力/体重の低下と動脈硬化の指標であるCAVIで高値傾向を示したのは、加齢の影響だけでは無く、運動の効果が得られていない可能性があると考える。よって、対象者の運動実施状況をさらに詳細に調査したうえで、個々に応じた適切な運動指導が必要であると考える。<BR>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680652026112
  • NII論文ID
    130007007718
  • DOI
    10.14902/kinkipt.2009.0.86.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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