乗馬シミュレータに騎乗時の体幹運動の特徴

  • 三谷 保弘
    四條畷学園大学リハビリテーション学部理学療法学専攻
  • 木村 哲彦
    日本リハビリテーション専門学校
  • 小林 敦郎
    順天堂大学医学部附属静岡病院リハビリテーション室

Description

【目的】乗馬シミュレータによる運動介入は,虚弱高齢者の運動機能を向上させるなど理学療法の手段としても有用であることが認められつつある。これは,乗馬シミュレータの揺動刺激が,騎乗者の運動機能を向上させるのに適したものであるからと考えられる。しかし,乗馬シミュレータの揺動刺激が騎乗者に対してどのような身体運動を誘発するのかについては十分な検討がなされていない。そこで今回,乗馬シミュレータに騎乗時の体幹運動を計測しその特徴を検討したので報告する。<BR> 【方法】対象は,研究参加の同意を得た健常成人30名(22.5±3.3歳)とした。乗馬シミュレータ(JOBA EU6414,松下電工社製)に騎乗時の体幹運動を超音波式三次元動作解析装置(CMS-HS,Zebris社製)を用いて計測した。なお,乗馬シミュレータの速さ設定は約1.4秒周期とした。対象者の第1胸椎部と第2仙椎部に3つの小型マーカから形成されるトリプルマーカを貼付し,それぞれ上部体幹と骨盤の角度変化の指標とした。また,それらトリプルマーカの相対的な動きを計測することにより脊柱の角度変化の指標とした。乗馬シミュレータの動きと体幹運動とを同期させるため,乗馬シミュレータの後部に小型マーカを1つ貼付した。<BR> 【結果】骨盤および上部体幹の前傾と後傾は1周期につきそれぞれ2回,側方傾斜と回旋は左右1回ずつ生じた。これら骨盤および上部体幹の角度変化は,乗馬シミュレータの動きに相反する傾向を示した。また,乗馬シミュレータ騎乗時は,安静立位時と比べて身体を前傾位に保持していることが示された。骨盤の後傾角度,前後傾斜可動範囲,左右回旋可動範囲は上部体幹に比べて大きかった。一方,骨盤の左右傾斜可動範囲は上部体幹に比べて小さかった。骨盤の後傾,左右傾斜,左右回旋のピークに達する時間(1周期に対する比率)は上部体幹に比べて早かった。<BR> 【考察】乗馬シミュレータの動きに相反した体幹運動や,骨盤と上部体幹の角度変化がピークに達する時間に違いを認めたことは,乗馬シミュレータの揺動刺激に対して立ち直り反応が誘発された結果であると考える。また,骨盤と上部体幹の各方向への可動範囲に差が生じたのは,乗馬シミュレータの揺動刺激に対して身体動揺を最小限にするための姿勢制御反応であると考えられる。乗馬シミュレータ騎乗時に認められた前傾位の姿勢は運動に備えた“構え姿勢”であり,揺動刺激に対応するための姿勢制御に適した姿勢であると言えよう。このように,乗馬シミュレータの揺動刺激は,姿勢制御能力を向上させるのに適したものであると考えられる。しかし,乗馬シミュレータの揺動刺激により誘発される体幹運動は画一的なものであり,あらゆる場面での姿勢制御能力を獲得することは困難であると考える。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680652078848
  • NII Article ID
    130007007747
  • DOI
    10.14902/kinkipt.2009.0.35.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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