脳卒中片麻痺患者の坐位における特性

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抄録

【目的】  我々理学療法士は脳卒中片麻痺患者の治療を行う上で姿勢コントロールの改善、そして移動や上肢機能につなげるという目的で端坐位によるアプローチを積極的に実施する。その際、多くの患者の重心が麻痺側へ偏倚しているような印象を受ける。そこで今回我々は、安静坐位での重心の側方偏倚を測定し片麻痺患者の坐位における特性について若干の知見を得たので報告する。 【対象】  当院入院中の片麻痺患者で、端坐位保持が30秒可能な25名を対象とした。内訳としては、平均年齢:70.9歳、右片麻痺15例、左片麻痺10例、平均罹病期間39.5日であった。なお、円背、側弯などの骨・関節の変形が著明な症例は除外した。 【方法】  片麻痺患者の安静坐位における重心の側方への偏倚を測定した。また、骨盤の前後の傾斜角度を測定し、両者の関係を調べた。さらに上記について、麻痺側別に症例を2群に分けた分析も行った。方法は対象者に背もたれのない台座上で足底を接地した端坐位をとり30秒間保持することを課題とした。なお足関節0°、膝関節90°で大腿が床面と水平になるよう調節し、大腿部が座面と接する面は1/2となるよう一定させた。前額面上における中心を尾骨とし、触診にて設定した。重心偏倚は重心動揺計(スズケン社製)を用いてX軸の動揺中心位置を測定した。骨盤の傾斜角度は上前腸骨棘、上後腸骨棘にマーカーを貼付し麻痺側側方からデジタルカメラで撮影した。統計手法についてはPEARSONの積率相関係数を使用した。 【結果】  25例中21例(84%)が麻痺側に偏倚していた。また、左片麻痺については10例中全てが麻痺側に、右片麻痺では15例中11例(73%)が麻痺側に偏倚していた。重心偏倚と骨盤傾斜角度の関係においては有意な相関関係がみられ(r=0.448,p<0.05)、後方への傾斜角度が大きい程、重心位置は中心から離れて側方に偏倚していた。また、右片麻痺患者においては有意な相関がみられた(r=0.539,p<0.05)が、左片麻痺患者については有意な相関はみられなかった(r=0.25)。 【考察】  片麻痺患者の安静坐位は約80%の割合で重心が麻痺側に偏倚していることが確認できた。重心偏倚と骨盤傾斜角度については、骨盤後傾角度が大きい程、重心の中心からの偏倚も大きくなるという関係があった。このことから重心の側方偏倚が著明な片麻痺患者の坐位姿勢の特性として、腰腹部、骨盤の筋活動が著しく低下しているために、骨盤の後傾角度が大きくなり、しかも麻痺側に重力で押しつぶされ、物理的に物と同じように安定性を保っているということが考えられる。また、麻痺側別にみた結果からは右片麻痺患者で有意な相関関係がみられたことから、腰腹部や骨盤の筋の活動性が重心の側方偏倚に、より影響していたと思われる。一方、左片麻痺患者ではそれらの要因だけでなく身体図式の障害やPusher症候群等の影響も考慮すべきであると考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680652110848
  • NII論文ID
    130007007765
  • DOI
    10.14902/kinkipt.2009.0.2.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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