地域在住高齢者における外反母趾と歩行の関係 ―3軸加速度計を用いて―
説明
【はじめに】<BR> 高齢者における外反母趾は、疼痛・足部機能の低下を原因として転倒リスクを増加させるとされている。しかし外反母趾を伴う高齢者の歩行についての研究は少なく、外反母趾による歩行の変化や転倒との因果関係は明らかではない。そこで、本研究は3軸加速度計を用いて高齢者における外反母趾と歩行との関係を明らかにすることを目的とする。<BR> 【対象・方法】<BR> 地域在住高齢者76名(男性44名、女性32名、平均年齢67.7±4.1歳)を対象者とした。歩行解析には3軸加速度計(サンプリング周波数:200Hz)を用いた。加速度計は第3腰椎棘突起部付近に接するようにゴムベルトを用いて装着し、自由歩行の条件下に計測した。また、三次元足型測定を行い外反母趾角を測定し、15度以上を外反母趾群、それ未満を非外反母趾群とした。さらに外反母趾群を両側罹患群、片側罹患群に群分けした。加速度解析にはMATLAB(2007b)を用いて左右、上下、前後の各方向についてapproximately entropy(以下ApEn)を、またstride-time variability(以下STCV)を求めた。統計解析はWilcoxon testを用い、5_%_未満を統計学的有意とした。<BR> 【結果】<BR> 外反母趾群は11名(男性5名、女性6名、平均年齢69.4±1.2歳)、非外反母趾群は65名(男性39名、女性26名、平均年齢67.5±0.5歳)であった。また、両側罹患群は7名(男性2名、女性5名、平均年齢67.9±3.7歳)、片側罹患群は4名(男性3名、女性1名、平均年齢72.0±0.8歳)であった。STCVは、外反母趾群で中央値2.21(1.66~3.69)、非外反母趾群で中央値1.79(0.93~4.06)で有意差はなかった(P=0.06)。加速度波形の前後方向のApEnは、外反母趾群で中央値0.46(0.38~0.64)、非外反母趾群で中央値0.50(0.29~0.85)(P=0.44)で有意差はなかった。しかし、両側罹患群と片側罹患群の前後方向のApEnを比較すると、両側罹患群で中央値0.42(0.38~0.56)、片側罹患群で中央値0.56(0.51~0.64)(P=0.03)で片側罹患群の前後方向のApEnは有意に大きかった。STCVは両側罹患群で中央値2.00(1.66~3.47)、片側罹患群で中央値2.25(2.04~3.69)(P=0.30)で有意差はなかった。左右、上下方向のApEnはどの群間の比較においても有意差はなかった。<BR> 【考察】<BR> 外反母趾群と非外反母趾群の比較では前後方向のApEnに有意差はなかったが、片側罹患群と両側罹患群の比較では片側罹患群のApEnが有意に大きく、歩行の滑らかさが小さいことが示された。外反母趾者の歩行においては、母趾MP関節の変形により前足部のロッカー機能による歩行中の体幹の前方移動コントロールが低下するとされている。母趾の変形に左右差があることで、体幹のコントロールがより困難になり歩行の滑らかさが失われたのではないかと考えられる。また、転倒との関連が深いとされているSTCVはどの群間の比較においても有意差がみられず、外反母趾と歩行のばらつきとの関係性は明らかではなかった。ただ、本研究では外反母趾群が少なく対象者に偏りがある可能性があるため、さらに対象者を増やし研究を続ける必要があると思われる。
収録刊行物
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- 近畿理学療法学術大会
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近畿理学療法学術大会 2008 (0), 74-74, 2008
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680652421376
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- NII論文ID
- 130007007814
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可