Mirror Therapyによる運動皮質興奮の調整
抄録
【目的】近年リハビリテーション(以下リハビリ)領域において、鏡像による錯視を利用して脳卒中片麻痺患者の運動機能改善を図る取り組みが行われている(mirror therapy)。すでに、臨床で応用され、運動麻痺の改善が得られたとする報告が散見される。しかし、その神経基盤に関しては、不明な点が多い。そこで今回、我々は経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いてmirror therapy前後の脳機能の変化を検討した。 【方法】右利きの健常成人4名を対象とした。TMS刺激は直径9cmの8字コイルを頭蓋骨に対して接線方向に固定し、右半球上にコイルを設置した。刺激領域は右一次運動野(M1)とし、左背側骨間筋(FDI)より運動誘発電位(MEP)を表面筋電図にて導出した。運動域値は、安静時(rMT)と筋収縮時(aMT)の2条件でFDIより10回中5回以上MEP振幅が50μVを越える最小の刺激強度とし、rMTの120%の刺激強度で同部位を刺激したときの振幅をMEP値とした。また、運動皮質内の抑制機構を評価するため、刺激間隔3msの2連発磁気刺激法によって皮質内抑制(ICI)を計測した。条件刺激はaMTの95%、テスト刺激は1mVのMEPを誘発する強度とし、テスト刺激のみのMEPに対する2連発刺激時のMEPの比率を求めた。運動課題は2つのコルクボールを30秒間、左手でできるだけ早く回す課題とし、介入前後でその回数を比較した。運動介入は2群に分けて実施した。mirror therapy群(M群)は、実際は右手でボール回しを行っている所を、鏡を利用して左手が行っているように錯覚させる方法を30秒間10セット実施した。一方non-mirror群(NM群)は、ボール回しを行っている右手は隠され、全く動いていない左手を注視しながらM群と同様30秒間10セットのボール回しを実施した。TMSによる脳機能評価は運動介入前後に行った。 【結果】運動介入による左手でのボール回しの回数は、M群で介入前24.0回、介入後30.5回、介入30分後32.0回と増加を示したのに対し、NM群ではそれぞれ前21.0回、後20.0回、30分後21.0回とボール回しの回数に変化が見られなかった。 MEPは、介入後M群で134%増加、NM群で118%増加とM群で高い増加率を示した。ICIは、M群で介入前が57.2%、介入後が76.5%となり、NM群では前49.5%、後57.2%であり、M群でICIの比率が大きくなった。 【考察】mirror therapyを用いた今回の介入で、鏡を用いない方法に比べパフォーマンスレベルの向上が顕著に見られた。また、介入前後での右運動野の活動性の比較より、mirror therapyによりMEPの高い増加率が示され、錯覚入力による感覚フィードバックが運動野を活性化することが示唆された。これは、先行研究と一致する結果であり、パフォーマンスが向上した要因の一つと考えられた。また、皮質内抑制機構に関する検討から、運動野が活性化する要因として、運動皮質の脱抑制機構が関与している可能性が示唆された。 【まとめ】mirror therapyにより運動同側の運動野が活性化され、パフォーマンスの向上にも寄与した可能性がある。
収録刊行物
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- 近畿理学療法学術大会
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近畿理学療法学術大会 2009 (0), 99-99, 2009
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680653150080
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- NII論文ID
- 130007007968
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可