当法人における介護予防の取り組みに対する効果について

DOI
  • 有馬 尚彦
    医療法人 啓信会 京都きづ川病院 リハビリテーション室
  • 梅垣 裕樹
    医療法人 啓信会 京都きづ川病院 リハビリテーション室
  • 中平 武志
    医療法人 啓信会 京都きづ川病院 リハビリテーション室
  • 中本 隆幸
    医療法人 啓信会 京都きづ川病院 リハビリテーション室

抄録

【目的】 当法人では平成19年6月、要支援1、2のみを対象とした介護予防デイサービスセンターを京都府下で初めて立ち上げた。そこでのコンセプトは最期のその時まで家族と暮らしていけるために老化の遅延を図り、生きがい・楽しみを持ちながら余生を過ごせる身体・精神を作ることとしている。上述のように老化の遅延、健康余命延伸のための取り組みとして、軽運動とマシントレーニングを実施し、運動器機能の向上を図った。そこで今回、当法人で行っている介護予防の取り組みに対する効果を検証したので報告する。 【方法】 平成19年6月~平成22年6月の間で利用された要支援1、2の利用者96人(平均年齢75.9歳±7.19)を対象に7種目の体力評価を実施し、半年間トレーニングを実施した。体力評価項目として握力、ファンクショナルリーチテスト(以下FR)、長座位体前屈、5m歩行、開眼片足立ち、Timed up & Goテスト(以下TUG)、膝伸展筋力の7種目を用い、測定誤差を少なくするために測定はすべて最大努力で実施した。体力評価測定の使用機器として、膝伸展筋力は株式会社モルテンのデジタル下肢筋力計を使用し、長座位体前屈には秦運動具工業のデジタル長座位体前屈計を使用した。体力評価は初回利用時、トレーニング開始後3カ月で実施した。トレーニングメニューは、椅子座位での準備体操、椅子座位での軽運動6種目、立位での軽運動5種目、マシントレーニング4種目(レッグプレス、ローイング、レッグエクステンション、ヒップアブダクション)を実施した。マシンはミナト医科学(株)のウェルトニックシリーズ(WT-01C、WT-02M、WT-03、WT-04)を使用した。マシントレーニングとして利用開始月は自覚的に軽いと感じる負荷量で実施し、2か月目以降からは筋力強化トレーニングとして自覚的にやや重い程度の負荷量で実施し、負荷量は漸増していった。効果の判定には対応のあるt検定を使用し、全対象者、要支援、年齢についての項目に分けて判定した。 【説明と同意】 対象者に研究目的を十分に説明し、研究参加に対して書面にて同意を得た。 【結果】 全対象者でみると、すべての項目で有意差がみられた。要支援1、2で比較すると、どちらにも開眼片足立ち、TUG、膝伸展筋力において有意差がみられた。握力、FRにおいては要支援1では有意差はみられなかったが、要支援2では有意差がみられた。5m歩行では要支援1で有意差がみられたが、要支援2では有意差はみられなかった。長座位体前屈では要支援1、2のどちらにも有意差はみられなかった。74歳未満の前期高齢者(以下74歳未満)と75歳以上の後期高齢者(以下75歳以上)で比較すると、握力、FR、長座位体前屈では74歳未満、75歳以上ともに有意差はみられなかった。5m歩行、開眼片足立ち、TUG、膝伸展筋力においては74歳未満、75歳以上ともに有意差がみられた。5m歩行とTUGではどの項目でも標準偏差に減少がみられた。要支援2、75歳以上で膝伸展筋力の標準偏差が減少していた。 【考察】 対象者全体で見ると、すべての評価項目で有意差がみられたことから、実施した軽運動・マシントレーニングの実施が介護予防効果をもたらしたと考えられる。要支援1と2の比較では、要支援2の方に改善項目が多い。これは介護度がより重度である要支援2の方が日中の活動機会が少ないことが考えられ、デイサービスセンターでのトレーニングが体を動かす活動機会となり、そのことが普段から活動機会の多い要支援1よりも効果をもたらした可能性が考えられる。年齢での比較では、75歳以上の方に改善項目が多い傾向にあった。これは要支援での比較同様に、より高齢であるほど日中の活動量や外出頻度が減少する傾向があると言われており、デイサービスセンターに参加することでトレーニングの実施に加えて活動機会が増えたことで効果が出たと考えられる。当初はより若年でより介護度が軽度の方が改善度は良いであろうと予測していたが、今回の結果はその予測と反した結果となった。しかし、これらのことから、より高齢で介護度が重度であっても身体能力の改善をもたらすことができた当法人の介護予防プログラムは、老年症候群の予防につながるものであると考えられる。 【理学療法研究としての意義】 高齢期に入ると生活習慣病の予防よりも健康余命の延伸が長寿につながる。そのためには介護度の重度化を予防する必要がある。介護度の重度化を予防することは転倒や転倒による骨折、うつや認知症などの老年症候群の減少に繋がり、そのことが後々の医療機関を利用する患者数の減少をもたらせば医療費の削減にも繋がるであろう。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680653216896
  • NII論文ID
    130007008000
  • DOI
    10.14902/kinkipt.2010.0.23.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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