足部変形に対し装具療法が奏効した二分脊椎症の一症例

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抄録

【目的】 二分脊椎症は下肢筋の脊髄髄節性支配により各髄節障害レベルに特有な筋麻痺の分布と筋バランスの欠如を示し、様々な下肢の変形を呈すると伴に歩行障害の原因となる。従って二分脊椎症患者が起立・歩行を行う際には各々に合ったアライメントでの装具の作成が必要となる。しかし、二分脊椎症の装具に関する文献は少ない。当院では医師、理学療法士、義肢装具士が連携を取り、症例各々に適した装具を作成している。当院では下位障害レベルの二分脊椎症に対して膝関節保護の目的で、両側金属支柱付き長下肢装具(以下、長下肢装具)を処方している。今回、本来独歩は可能であるが足部の変形の為、通常の長下肢装具では足部に発赤や水疱が生じ褥瘡となる危険性から、歩行の制限を余儀なくされた二分脊椎症児に対し、長下肢装具を改良することで発赤・水疱が消失し、日常生活で独歩可能となった症例を経験したので報告する。 【方法】 症例は7歳女児。最下位残存能力L5レベル。ROMは足関節背屈(右-20°/左-10°)底屈(右50°/左50°)内反(右50°/Lt35°)外反(右10°/Lt45°)MMTは背屈(右5/左5)底屈(右2/左2)内反(右5/左3)外反(右1/左5)である。著明な右内反変形、左外反変形を呈していた。当時作成した装具では、Insoleの足底がflatであり装具内で右足部は踵骨が回外し内反・尖足位に、左足部は踵骨が回内し外反位となっていた。発赤部位は右足部で外側部、左足部で内側部に生じていた。これらに対し装具内で左右の足部内・外反を生じさせないよう、踵骨中間位で足関節背屈が行える底屈位のInsoleを考案した。当院では歩行可能な二分脊椎症に対して、足継ぎ手の可動域は底屈0°~背屈15°の可動域の範囲を基準とし作成している。足継ぎ手が最大背屈位となる15°の際に足関節最大背屈位(右-20°/左-10°)となるように、足部Insoleのheelにwedgeを付けた。Wedgeの角度は底屈(右20°/Lt10°)である。また、足部Insoleのheelにwedgeを付け踵骨中間位が保たれる事で、起立・歩行時に足底での体重支持が可能になると考えた。 【説明と同意】 本人とその家族には本研究の趣旨を説明し、書面による同意を得た。 【結果】 起立・歩行時に足継ぎ手最大背屈位の15°となった際も、装具内で足部は踵骨が中間位に保たれ、足底に均等な圧での体重支持が可能となり、発赤、水疱が生じなくなった。 【考察】 本症例において装具を改良することで発赤・水泡が消失し、現在では、通学、小学校内も含め全ての日常生活の範囲で独歩可能となっている。装具を改良する以前は歩行時に躓き転倒することが多く見られたが、底屈位のInsoleを考案し装具内踵骨中間位で足関節背屈が行えた事で、足底での体重支持が可能となり不安定性が改善され転倒の回数も減少したと考える。本症例を経験し、足部変形に対し早期より適したアライメントの装具を作成することが重要であると考えられた。 【理学療法学研究としての意義】 足部変形により歩行の制限が生じた二分脊椎症に対し、装具療法により歩行が可能となることを示すことができ、二分脊椎症への理学療法の新たな展開につながると思われる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680653268736
  • NII論文ID
    130007008039
  • DOI
    10.14902/kinkipt.2010.0.53.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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