術後1年経過したTKAの治療成績

  • 大江 寿
    京丹後市立弥栄病院 リハビリテーション科

説明

【目的】 当院で施行されている全人工膝関節置換術(TKA)の症例は、術後30日前後で退院し、3週程度外来通院する症例が多い.通院まで経過観察が可能であるも、それ以降の経過は不明であった.今回TKA施行後1年後の経過を観察することで、退院後の治療成績の是非を確認したい. 【方法】 調査期間:平成20年9月~21年6月.対象症例:男性5例.女性9例.合計14症例.一期的両側TKA:4例、8関節.二期的両側TKA:1例、1関節.右TKA:2例、2関節.左TKA:7例、7関節.合計18関節.対象TKA症例の原因疾患の分類:両膝OA:4例、右OA:2例、左OA:7例、左大腿骨内顆骨壊死:1例.以上の症例において、「OA膝治療成績判定基準(JOA)」、「VAS」、「実測角度(膝関節屈曲、伸展、内・外反)」、「大腿周径(膝蓋骨上縁0、5、10、15cm)、下腿周径」、「10m歩行速度(緩歩、速歩)」、「関節動揺性(動揺性)」、「患者満足度(満足度)」を、術後1カ月後・1年後(366±17日)で評価.10m歩行速度は緩歩、速歩につき歩数と秒数を記録.動揺性は膝関節側方、前後で、(Tight(+):1点、Normal(±):0点、Loose(-):-1点)点数化.満足度を(とてもよかった:5点、良かった・人に勧める:4点、人に勧めるほどではない:3点、わからない:2点、やらないほうがよかった:1点)点数化して記録.それぞれの項目につき、1年後に得たデータ数値から1ヶ月後の数値を減じた.その差の標準偏差をもって、データに対応のある独立2サンプル平均値検定で比較(有意水準5%未満).膝関節屈曲角度については術前に対する1年後の角度の割合を算出した. 【説明と同意】 平成20年9月~21年6月に施行されたTKA症例、術後1年を経過した14例に対して当院使用の説明文書を使用し調査説明を行った.同時に同意のもと調査の協力を得た. 【結果】 (術後1ヶ月後評価)JOA:72±12点.膝関節屈曲角度:115±10°.伸展:-11±5°.外反3.5±1°.VAS:4.4±2.大腿周径:37.1±4cm(0cm)、38±3cm(5cm)、40±2cm(10cm)、44±3cm(15cm).下腿周径:32±3cm.10m歩行速度;緩歩:23.3±7歩、13.2±4秒.速歩:19.6±5歩、10.1±3秒.動揺性(側方):0±0.7 点.(前後):0±0.4点.満足度:3.9±0.8点であった. (術後1年後評価)JOA:80±11.1点.膝関節屈曲角度:118±14°(改善率:93±10%).伸展:-5.9±6°.外反:3.5±2°.VAS:2.2±3.大腿周径:38.6±5cm(0cm)、38.5±5cm(5cm)、42.1±5cm(10cm)、46.2±5cm(15cm).下腿周径:34±3cm.10m歩行速度;緩歩:19.3±4歩、9.7±2秒.速歩:17.3±3歩、7.6±2秒.動揺性(側方):0.2±0.8点.(前後):0.1±0.3 点.満足度:4.0±0.7点であった.JOAスコア総計増加、VASの改善、膝関節屈曲角度、伸展角度改善、大腿周径10、15cmでの周径の増大、10m歩行速度(緩歩、速歩)の歩数、秒数の短縮に有意差を認めた.膝関節内・外反角度、大腿周径0、5cm、下腿周径、動揺性、満足度において有意差を認めなかった.脱臼、再置換はなかった. 【考察】 術後1カ月から1年の期間で、JOAスコア、VASの軽減、膝関節屈曲角度拡大、伸展角度減少、大腿周径10、15cmでの周径の増大、10m歩行速度において改善していることを認めた.膝関節内・外反角度、大腿周径0、5cm、下腿周径、動揺性、満足度において変化がないことを認めた. VASの軽減と、動揺性がNormalを保っている事は、JOAの改善、10m歩行速度改善に影響を与え、行動範囲の拡大につながっていると考えられる.その結果、大腿周径10、15cmで増大がみられ、下肢筋群のボリュームに影響するものと考えられる.外来通院を離れてからでも機能改善がみられ、満足度:4.0±0.7点をもって在宅生活が送られている事に関しては、今回の症例群のフォロー、退院時期、通院期間において問題がないことを意味するものと考えられる. 【理学療法研究としての意義】 現在の理学療法を取り巻く環境において早期退院、在宅復帰が求められるが、その後の長期経過観察においては課題が残る.今回の調査は術後1年であり、5年、10年といった長期経過を観察するには不十分な期間である.しかし長期に至る途中の経過観察、評価、記録を残すことにより長期成績を良好なものにする為にも今回の調査は有意義なものであったと考えられる.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680653279488
  • NII論文ID
    130007008044
  • DOI
    10.14902/kinkipt.2010.0.50.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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