漢字認識閾値サイズの測定

説明

【目的】<BR> 漢字が認識できる最小サイズは空間分解能よりも大きくする必要がある。しかし、たとえば空間分解能に対して漢字は何倍の大きさにすればよいのか、文字線幅の太さと空間分解能が一致したとき漢字は読めるようになるのか等といった基本的な問題については明らかにされていないことが多い。本研究では、画数別に漢字認識閾値サイズの測定を行い、空間分解能との関連について検討した。<BR><BR>【方法】<BR> 検眼鏡的に異常のない両眼矯正視力1.0以上の10名(平均年齢21.6歳)を対象とした。文字刺激は教育漢字1008文字から親密度5.0以上で2~20画の範囲で画数別に3文字ずつ抽出した漢字57文字と、平仮名清音46文字を使用し、2400dpiのイメージセッターで印画紙に印刷して作成した。フォントはヒラギノ角ゴシックproW3であり、文字サイズを2.3~11分の範囲で1.25倍ずつ変化させた。背景輝度は188.3 cd/m2、文字輝度は11.7cd/m2、マイケルソン・コントラストは0.88であった。<BR> 試行は明室で行い、実験者が無作為順で1文字ずつ呈示した刺激を被験者は5メートルの視距離で刺激を両眼で観察し、何の文字であるかを口頭で応答した。認識閾値サイズは極限法の下降系列を用いて1文字ずつ求めた。空間分解能はランドルト環を用いて測定した。<BR><BR>【結果と考察】<BR> 認識閾値サイズは画数の増大に伴い単調増加するのではなく、5画までは急激に、6画以降では緩やかに増大していた。空間分解能に対して、2画の文字で約7倍、20画で約17倍の文字サイズにすることが漢字認識に必要であることがわかった。また、閾値サイズでの文字線幅の太さを求めたところ、少画数の漢字では線幅は空間分解能より細く、多画数の複雑な文字では逆に太くなっていた。このことは漢字認識では線幅以外の視覚的手がかりが使われていることを示唆している。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680654071296
  • NII論文ID
    130005456793
  • DOI
    10.11507/jarvi.21.0_127
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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