中心暗点のあるロービジョン患者の読書検査 ―推定最適倍率より大幅な拡大により頭部運動が減り読書速度が上昇した一例 ―

Description

【目的】中心暗点のあるロービジョン患者の読書困難の特徴は、高い拡大率が要ることと、偏心視のための眼球・頭部運動の制御の難しさにある。今回、拡大読書器での読書において、読書検査から推測された臨界文字サイズ(以下CPS)よりさらに大幅に拡大すると偏心視のための頭部運動が減少し、読書パフォーマンスの向上がみられた症例を経験したので報告する。<br> 【症例】85歳男性、両眼加齢黄斑変性で、矯正視力は右0.05、左0.15、両眼開放下で中心部を含む右視野に10度以上の暗点があった。PC版MNREAD-J(19inchモニタ, 1.1~1.7logMAR)による読書評価では、CPSは1.3 logMAR、最大読書速度は66字/分であった。<br>【方法】拡大読書器上の文字をCPSから徐々に拡大していき読書の様子を観察した。変化が生じたときのサイズとCPSの二つのサイズ条件で速度と頭部運動についてビデオ分析した。<br> 【結果】読書の様子が変化したサイズを換算すると2.8 logMARで, CPSの約10倍であった。CPS条件(1.78logMAR)と比較すると、速度はそれぞれ79±26字/分と65±15字/分、頭部運動(1方向の動きを1回)は36回/分と94回/分で、2.8 log MARまで大幅に拡大すると読書速度も速く(p=0.08)、頭部運動も少なくなった。<br> 【考察】本症例にとって実際の最適文字サイズは検査から推測されたものより約10倍大きい2.8logMARであったが、検査に使用した19inchモニタで表示可能なサイズの上限は、輻輳の負担を要する極端な接近視を避けると約1.8logMARであり、検査から最適サイズの推測は困難であった。視力が1 log MARを超えたり(中村ら2000)、読書中の頭部運動が多い中心暗点の患者には、表示モニタを大きくしたり、拡大読書器を用いるなど、最適な文字サイズを見逃さない測定条件を整える必要があると思われた。

Journal

  • JSRVI Annual Abstract Meeting

    JSRVI Annual Abstract Meeting 18 (0), 45-45, 2009

    Japanese Association of Rehabilitation for the Visually Impaired

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680654711936
  • NII Article ID
    130007008079
  • DOI
    10.11507/jarvi.18.0.45.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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