魚類の繁殖における雌雄の利害対立

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  • Sexual conflict in fishes

抄録

魚類は脊椎動物の中でも、配偶システムや保育行動といった繁殖様式が極めて多様な分類群であることが知られている。一方で魚類の繁殖における最も大きな特徴の一つは、その受精様式にある。現生魚類の大半を占める硬骨魚類では交尾をしない体外受精が一般的な受精様式であり、約9割の種が採用している。そのため、近年昆虫で活発に研究されている“交尾回数や交尾持続時間をめぐる性的対立”や“交尾に関連する形態形質や生理形質の拮抗的共進化”という現象は魚類にはほとんど存在しないと言えるだろう。<br> しかし、魚類における性的対立の具体的事例も配偶システムや繁殖戦略の進化を扱った研究の中で次第に示されてきており、近年では性的対立に注目した研究も珍しくない。多様な繁殖様式と関連して雌雄の対立様相も様々で、配偶者数や配偶者の遺棄、親の子への投資などをめぐる性的対立の存在やそのダイナミクスが報告されている。また、性的対立による拮抗的共進化の結果と予想される雌雄の興味深い社会行動も知られている。このような魚類の性的対立に注目した近年の研究成果は、演者が研究した摂餌なわばりを共同防衛するサンゴ礁魚類の事例も含めて、本学会第45回大会(1998年)の自由式シンポジウム「対立する性〜魚類における雌雄のかけひき」でも紹介された。<br> 本講演では、演者自身の研究成果も含めて、魚類の性的対立に関する最新の研究事例をレビューし、魚類の繁殖における雌雄の利害対立の様相とその対立図式の多様性を紹介するとともに、性的対立がもたらす雌雄の行動形質の拮抗的共進化についても議論を加えたい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680666589952
  • NII論文ID
    130007011008
  • DOI
    10.14848/esj.esj52.0.66.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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