サンゴ白化の謎を解く:サンゴと褐虫藻共生の進化生態学的考察
書誌事項
- タイトル別名
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- Revealing unsolved questions about coral bleaching: evolutionary-ecology thinking of coral-zooxanthella symbiosis
説明
地球温暖化により1998年には沖縄を含む世界のサンゴ礁で水温が上昇し、サンゴが共生する褐虫藻を失う白化死亡が大規模に起こった。沖縄島周辺のサンゴ礁では、この大規模白化のためにサンゴの被度が80%程度減少した。一方、沖縄島の西40 kmにある慶良間列島では、サンゴの死亡はわずかに見られたのみであった。サンゴの白化には、以下のような特徴がある。1)夏季の最高水温が、平年よりも2℃上昇するだけで大規模な白化が起こる、2)白化のしやすさと白化による死亡率は、種によって大きく異なる、3)沖縄島と慶良間のように隣接する地域で、白化の頻度と白化に引き続くサンゴの死亡率が大きく異なる。ここでは1)と3)について、進化生態学的視点から検証可能な仮説を提示する。褐虫藻には形態的な変異はないものの、遺伝的には多様なクレードがあることが知られており、クレードによって共生するサンゴの高温耐性が異なることも明らかとなってきた。そこで、褐虫藻の高温耐性と非高温時の光合成効率がトレードオフとなっていると考えれば、1)を説明できる。またサンゴの白化は、高水温と強光となった際に褐虫藻の光合成暗反応が阻害され、活性酸素が放出されることによって起こるという仮説が提唱されており、一方、栄養塩を添加した海水中でサンゴを飼育すれば、褐虫藻の密度が増加するという実験例がある。褐虫藻密度が増加すれば、高水温強光となった時に放出される活性酸素量も増加すると考えられ、富栄養化したサンゴ礁ではサンゴの白化がより強く起こると予想され、3)を部分的に説明できる。サンゴ礁における保全生態学的研究には進化生態学的思考がほとんど取り入れられていない。進化生態学的な考え方を取り入れることによって、サンゴ礁保全生態学を変革していきたい。
収録刊行物
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- 日本生態学会大会講演要旨集
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日本生態学会大会講演要旨集 ESJ52 (0), 116-116, 2005
日本生態学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680666647296
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- NII論文ID
- 130007011107
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可