小笠原の川の固有水生生物 1.トビケラと陸水エビについて
書誌事項
- タイトル別名
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- Aquatic organisms endemic to the streams of Bonin Islands 1. caddisflies and inland water shrimps
説明
小笠原諸島は大陸と陸続きになったことのない「海洋島」として知られている。父島や母島にはさまざまな河川があり、種々の水生生物が生息している。 1998年2月から2000年5月にかけて父島26地点、母島12地点で調査を行った。各調査地点で、pHメーター、電気伝導度計を用いて、環境要因の測定を行った。トビケラの成虫についてはスウィーピングおよびライトトラップによる採集を行い、トビケラの幼虫と陸水エビについてはDフレームネットおよびサーバーネットを用いて採集を行った。 トビケラでは2種の分布が確認された。オガサワラニンギョウトビケラは父島の河川の源流域で生息が確認されているが、いずれの生息地も僅かな面積しかなく、絶滅が危惧される。近縁種のニンギョウトビケラは本州や中国大陸、極東ロシアなどに分布している。オガサワラニンギョウトビケラは、近縁種と比べ体が著しく矮小化している他、雄の成虫の交尾器の形態などが異なる。ヒメトビケラ科の1種(Hydroptilidae gen. sp.)は終令幼虫の体長が僅か2mm前後と小型である。終令幼虫は巣を作り、若齢幼虫は巣を持たず淡水産紅藻であるカワモズクの群体のなかに生息している。 また、陸水エビは2科5属7種の分布が確認された。うちテナガエビ科は2属2種、ヌマエビ科は3属5種。オガサワラコテナガエビは父島の汽水域でのみ生息が確認された。八瀬川河口を除くといずれの生息地も僅かな面積しかなく絶滅が危惧される。ヌマエビ属の1種(Paratya sp.)は父島と母島の河川の上流部および源流部で発見されたが、分布域は非常に限られた。大卵少産型であり、同じ属のヌマエビやヌカエビと比較して矮小化している。父島と母島の個体群は形態学的には区別がつかないが、アロザイム解析では違いが見られた。
収録刊行物
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- 日本生態学会大会講演要旨集
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日本生態学会大会講演要旨集 ESJ52 (0), 758-758, 2005
日本生態学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680666718464
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- NII論文ID
- 130007011239
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可