個体数と制限要因の関係性を変える空間的上位階層からの影響:林床に棲むチビサラグモの場合

DOI
  • 高田 まゆら
    東京大学農学生命科学研究科生物多様性科学研究室
  • 宮下 直
    東京大学農学生命科学研究科生物多様性科学研究室

書誌事項

タイトル別名
  • Larger spatial scale effects change the relationship between limiting factor and density at smaller scale: A case study of sheet-web spider Neriene brongersmai

説明

本研究は、スギ林床に生息するチビサラグモを用いて、パッチレベルにおける生物の個体数とその制限要因との関係性が、上位の階層である個体群レベルの要因からどのような影響を受けているかを明らかにした。千葉県房総半島におけるスギ林15ヶ所をそれぞれチビサラグモの個体群とみなし、各個体群でパッチレベルでのサラグモ個体数と造網のための棲み場所の量(以下、足場量)、および個体群レベルでの足場量と餌量、スギ林の面積を4つの発育ステージで調べた。<br> まずパッチレベルでの個体数は、パッチ内での足場量と正の相関があった。次にパッチ内の足場量を共変量として共分散分析を行った結果、すべての発育ステージでパッチ内の個体数は個体群間で有意に異なっていた。つまり個体群レベルでの何らかの要因がパッチレベルの個体数と足場量の関係を相加的に変化させていた(相加効果)。重回帰分析の結果、この相加効果は、個体群レベルでの足場量の違いにより生じていることが推察された。<br> 次に個体群レベルの足場量がもたらす相加効果のメカニズムを知るため、まず発育ステージ間で相加効果の大きさを比較し、その効果が及ぶステージを特定した。その結果、幼体初期で最も大きく、発育ステージが進むほど小さくなり、次世代の幼体初期に再び大きくなっていた。つまり、相加効果は成体から幼体初期の間で働いていると推測された。個体群レベルの足場量とサラグモの繁殖率との間には関係がなかったため、相加効果は卵から幼体初期における個体群間での死亡率の差が原因と考えられた。個体群レベルの足場量の違いが幼体初期の個体群間での死亡率の差をもたらしているという仮説を検証するため、現在、広範囲の足場量とサラグモ個体数を操作したエンクロージャー間でサラグモの死亡率を比較するという野外実験を行っており、その結果も併せて発表する。<br>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680666807424
  • NII論文ID
    130007011396
  • DOI
    10.14848/esj.esj51.0.45.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ