盗み寄生者チリイソウロウグモにおける形態形質の地理的変異 -宿主利用の異なる3地域間での比較-

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タイトル別名
  • Geographic variation of morphological traits in kleptoparasitic spider <i>Argyrodes kumadai</i> (Araneae, Theridiidae): comparison among three populations utilizing different hosts

抄録

イソウロウグモ類は造網性クモ類の網に侵入し餌を盗む「盗み寄生者」である。この仲間は種間で多様な採餌行動や形態が見られるが、この多様性をもたらした要因として、宿主利用の変化に伴う形質分化が考えられる。チリイソウロウグモは地域によって異なる宿主を利用し、八重山地方ではクサグモ、スズミグモ、ハラビロスズミグモ、キヌアミグモといった複数の宿主の利用が確認され、沖縄本島・奄美大島ではスズミグモ、本土ではクサグモと単一の宿主に依存していることが分かった。演者らはスズミグモ利用個体群とクサグモ利用個体群との間で,体サイズと相対脚長に違いがあることを明らかにした。間接的証拠によりこれらの違いは宿主利用の違いに伴う餌獲得量の違いと、網上の移動に関わる形質にかかる選択圧の違いを反映していると考察した(日本応用動物昆虫学会2004)。仮に形態の違いが宿主の性質を反映するならば、単一の宿主を利用する個体群では、形質の特化の度合いがより強くなることが予測される。本講演では複数宿主を利用する八重山個体群を含めた3地域で体サイズと相対脚長の地理的変異パターンを明らかにし、形態変異の意義について再検討する。 体サイズを比較したところ沖縄・奄美>八重山=本土という結果が得られた。一方、相対脚長については沖縄・奄美=八重山>本土と異なるパターンが示された。スズミグモは宿主の中でサイズが最も大きく、また構造上餌を盗みやすいため、獲得できる資源量が多い。そのため、沖縄・奄美個体群で体サイズが最大になったと考えられる。相対脚長については、クサグモは密な網構造を持つため、本土ではその網上を移動するのに適した短い脚長が進化した可能性がある。八重山地方では複数の宿主を利用しているため、形質が中間的な値を示したものと思われる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680666916992
  • NII論文ID
    130007011593
  • DOI
    10.14848/esj.esj52.0.591.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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