ヤマノイモの種子とムカゴの散布距離の比較 -風・重力・ネズミ-
書誌事項
- タイトル別名
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- Comparison for disoersal distance between seeds and bulbils of <i>Dioscorea japonica</i>
抄録
有性繁殖とクローン繁殖の両方を行うヤマノイモは種子とムカゴを作る。ムカゴは乾燥重量にして種子の100倍程度であり,暗環境下でも発芽・成長できるので,子個体の生存率は種子よりムカゴの方が高いだろう。またクローンであるムカゴでは雌親の遺伝子が種子の2倍伝わる。この2つの利点から,ムカゴだけを作る方が有利であるように思われるが,実際にはヤマノイモは盛んに有性繁殖を行う。その理由の一つとしてムカゴの散布距離の短さが考えられる。散布距離が短い場合,子間で競争が起こり適応度の減少につながる可能性が高いからだ。翼を持つ種子は風により,持たないムカゴは重力によって散布される。従って散布距離は種子がムカゴより長いと予測される。ただし予備実験からムカゴはネズミによって被食されることが示されたため,ネズミによる二次散布がムカゴの散布距離を伸ばす可能性もある。同じ種で2タイプの散布体をもつヤマノイモを用いて,二次散布距離も含めたムカゴと種子の散布距離を推定した。各々の一次散布距離をGreene&Johnson(1989)のモデルにより計算した。各々の散布体が2m落下する間の時間を計測し,終端落下速度を推定した。風速は気象台が発表している京都市の11月中旬_から_12月中旬までの日平均風速値を用いた。散布距離は種子の方がムカゴよりも長いという結果が得られ,予測が裏付けられた。また、ネズミによるムカゴの二次散布距離を調べるために,糸で標識したムカゴ30個を大文字山の4カ所に置き,移動距離を測定、また持ち去り率を求めた。散布距離は平均1.25±1.64mであった。ネズミの貯食行動が雌親個体周辺での実生間の競争を緩和する可能性はあるが,ムカゴの散布距離が種子のそれを越えるほどではないことが推察された。
収録刊行物
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- 日本生態学会大会講演要旨集
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日本生態学会大会講演要旨集 ESJ52 (0), 528-528, 2005
日本生態学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680667010688
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- NII論文ID
- 130007011756
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可