関東地方におけるモツゴの遺伝情報と保全

DOI
  • 斉藤 悠
    明治大学大学院農学研究科農学専攻 応用植物生態学研究室
  • 倉本 宣
    明治大学大学院農学研究科農学専攻 応用植物生態学研究室

書誌事項

タイトル別名
  • The gene characteristics and coservation of Pseudorasbora parva in the Kanto area.

抄録

淡水魚とりわけ純淡水魚は、淡水域が連続している場合のみ交流が可能なため、種内の地域集団間で明瞭な遺伝的分化が見られることが多い。しかし多くの淡水魚類で、遺伝的多様性の実体は明らかにされておらず、メタ個体群を超えた移入も多く行われている。そこで本研究では、アロザイム分析を用いて関東地方南部におけるモツゴPseudorasbora parvaの遺伝的な情報を明らかにし、保全単位を考えるための基礎資料とした。<br><br> モツゴは、今でも比較的普通に見られる純淡水魚であるが、千葉県のレッドデータブックに記載されているなど、生息数の減少が示唆されている。しかし、自然分布していない東北地方や北海道に定着し、また、近縁種のシナイモツゴP. pumila pumilaとの置き換わりも確認されるなど、国内移入種として認識されている。<br><br> アロザイム分析には、東京都、千葉県、神奈川県の合計11地点で採取した試料を用いた。採取した試料は、分析まで冷凍で保存し、眼、肝臓、筋肉の各組織を取り出し、電気泳動の試料とした。電気泳動はデンプンゲルを用いて行い、泳動後、5酵素1非酵素タンパク質について染色を行った。染色の結果、14遺伝子座が推定され、このうち8遺伝子座で多型が認められた。推定された遺伝子頻度をもとに、遺伝的距離を求めたところ、最も大きな遺伝距離は0.0193となり、逆に最も遺伝的距離が小さかったものは0.0005となった。<br><br> 同一の水系内では、調査した個体群間でメタ個体群を形成していることが示唆された。しかし、他の水系から完全に隔離されている小さい個体群では、遺伝的浮動の影響と見られる遺伝子の偏りが確認され、その結果、他の個体群との遺伝的距離が大きくなったと推察された。また、地理的距離と遺伝的距離とが合致せず、一部には移入された個体群が存在する可能性も示唆された。<br>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680667012992
  • NII論文ID
    130007011760
  • DOI
    10.14848/esj.esj51.0.532.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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