北海道野幌森林公園における外来アライグマと在来エゾタヌキの関係(2) ーエゾタヌキの生息数推定とアライグマ対策への提言ー
書誌事項
- タイトル別名
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- Relations between invasive raccoons and native raccoon dogs in Nopporo Forest Park, Hokkaido(2).
説明
野生化したアライグマによる在来生物相への影響や農業被害が深刻化するなか、北海道では1999年よりアライグマの完全排除をめざした捕獲駆除事業(以下、事業捕獲とする)を進めている。この事業において、緊急対策地域に指定された野幌森林公園では、7月から9月の連続する2ヶ月間で合計2,100罠・日の罠が毎年設置されてきた。しかし一方で、こうした捕獲事業が在来生物相に及ぼす影響や駆除の効果などの検討は、まだほとんど手つかずの状況にある。そこで、近年アライグマの捕獲罠に混獲される回数が急速に増加している野幌森林公園のエゾタヌキの生息数推定と事業実施期間中の生息状況の変化についての分析を試みた。<br> 方法は、2003年7月から8月の事業において混獲されたすべてのエゾタヌキに対して、麻酔処置後マイクロチップを導入し、個体識別を行うことによって事業期間中の再捕獲率を算出した。また、この結果をもとに野幌森林公園で行われた過去5年分の事業捕獲記録の再検討を行い、エゾタヌキの生息数の年次変化を推定した。その結果、2003年度の野幌森林公園で生息を確認できたエゾタヌキは25頭、1頭あたりの再捕獲回数は8回であった。また、この再捕獲率をもとに1999年度から2002年度のエゾタヌキの生息数を推定すると、それぞれ3、8、43、19頭となった。このエゾタヌキの推定生息数の年次変化は、同公園内におけるアライグマの捕獲頭数の増減と対照的に推移しており、両種が競合している可能性が示唆された。<br> この結果は、事業捕獲で得られる混獲のデータを活用することで、エゾタヌキとアライグマの種間関係を明らかにできる可能性を示した。また、ここで明らかになったエゾタヌキの高い再捕獲率は、混獲がアライグマ捕獲の効率を低下させたり、エゾタヌキ自身への強い負荷となるなど、新たな問題が存在することも示した。
収録刊行物
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- 日本生態学会大会講演要旨集
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日本生態学会大会講演要旨集 ESJ51 (0), 521-521, 2004
日本生態学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680667049472
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- NII論文ID
- 130007011828
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可