落葉高木層のフェノロジーに着目した常緑林床植物のエゾユズリハの光合成順化
書誌事項
- タイトル別名
-
- Photosynthetic acclimation in Daphniphyllum humile, an evergreen understory shrub, with respect to deciduous overstory phenology
抄録
林床植物が生育するブナ林床の光環境は上層木の葉の季節的動態や空間分布によって大きな影響を受け、さらに、上層木落葉期には気温が低下する。このような不均一な環境で生育する林床植物はいかに必要な光を獲得し、いかにそれを効率よく物質生産に利用するかが重要な課題である。本研究では、落葉高木層のフェノロジーに着目し、常緑林床植物の生育環境の変化に対する光合成順化について検討した。試験地は新潟県苗場山系標高900mのブナ林である。ブナ林内の異なる光環境に生育する常緑林床植物であるエゾユズリハを対象とし、光合成速度、クロロフィル蛍光、窒素含有量、色素組成とRubisco含有量を測定した。1)上層木落葉期の低温に対し、林内に生育するエゾユズリハの光合成最適温度は低温側にシフトし、最適温度での光合成は維持されていた。また、光合成の温度順化が物質生産に大きな影響を及ぼしており、仮に光合成の温度順化を考慮しなければ、物質生産は25%過小評価してしまうことも明らかになった。2)上層木落葉期に低温と強光によって生じる危険性のある光阻害を回避するために、エゾユズリハはキサントフィルサイクルのプールサイズの増加、クロロフィルの組成変化やRubisco含有量の増加によって光阻害を回避していることが明らかになった。3)一年葉は当年葉によって被陰されるが、その被陰の程度は強光環境に生育する個体ほど大きく、葉の寿命は短い。このような特性をもつエゾユズリハの光合成特性や窒素利用について調べた結果、相互被陰の程度が大きい環境で生育している一年葉ほど窒素含有量(特にRubisco)や光合成速度の低下が大きい。この結果は、光環境の悪化だけでは説明できず、葉の老化も原因の一つであることが明らかになった。
収録刊行物
-
- 日本生態学会大会講演要旨集
-
日本生態学会大会講演要旨集 ESJ52 (0), 544-544, 2005
日本生態学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390282680667053184
-
- NII論文ID
- 130007011835
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可