ヒヌマイトトンボ保全のために創成したヨシ群落の動態と侵入した蜻蛉目昆虫
書誌事項
- タイトル別名
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- Dynamics of reed community artificially established for conservation of the endangered damselfly <i>Mortonagrion hirosei</i> and odonate larvae inhabiting the community
説明
レッドデータブックにおいて絶滅危惧I類に指定されているヒヌマイトトンボは、汽水域に成立するヨシ群落を生息地とし、1つのヨシ群落内で一生を完結する特異な生活史をもっている。本種の生息地が1999年に三重県宮川河口域の下水道浄化センター建設予定地に隣接する500m2に満たないヨシ群落で発見された。開発によって、本種個体群の存続は難しいと予測されたので、ヨシ群落を保護すると共に、隣接する放棄水田にヨシ群落を創成する保全事業が開始された。生息地では、幼虫時代を過ごすヨシ群落内の水位は安定していたが、塩分濃度は年間を通して0.8‰から18‰の間で変動している。成虫時代の生息環境であるヨシ群落の根元(水面上約20cm)は、ヨシが密生しているので、かなり暗い。そこで、創成地におけるヨシの生長過程と群落の根元の相対照度、塩分濃度を継続的に調査し、生息地と比較した。創成地で芽生えたヨシの密度に有意な差はなかったが、細く背が低かったため、群落根元付近の相対照度は高くなっていた。春から秋まで、創成地のヨシ群落には数種の蜻蛉目成虫が飛来した。淡水と海水を混合した汽水を供給した創成地の塩分濃度は、生息地の変化とほぼ同様に管理したが、吐出口から遠い場所ほど塩分濃度は低くなった。秋に幼虫の採集を行なったところ、本来のヨシ群落からは、ヒヌマイトトンボの幼虫しか採集されなかった。一方、創成地ではごく少数のヒヌマイトトンボと、多数のアオモンイトトンボの幼虫が採集された。アオモンイトトンボは幼時代と成虫時代のそれぞれでヒヌマイトトンボの捕食者となるので、1つのヨシ群落の中に2種が生息するとヒヌマイトトンボは駆逐されてしまう可能性が高い。これらの結果から、創成したヨシ群落をヒヌマイトトンボの生息環境とするための管理方法を提言する。
収録刊行物
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- 日本生態学会大会講演要旨集
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日本生態学会大会講演要旨集 ESJ51 (0), 549-549, 2004
日本生態学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680667081088
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- NII論文ID
- 130007011884
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可