被食者の捕食回避行動が食物連鎖の安定性に及ぼす影響
書誌事項
- タイトル別名
-
- Effects of Predator Avoidance on Stability of Food Chains
説明
捕食者は餌を食うことによって,被食者個体群に直接の影響を及ぼすだけではなく,被食者の捕食回避行動を誘発することによって,捕食者と被食者の遭遇率を下げたり,被食者の摂餌率や繁殖率を下げたりするなど,捕食者と被食者の相互作用や被食者と資源との相互作用に間接的な影響を及ぼす。本研究では,このような間接効果が捕食者_-_被食者_-_資源からなる3栄養段階の食物連鎖の安定性に及ぼす影響を,数理モデルを使って調べる。<br> 資源はロジスティック成長し,被食者と資源,捕食者と資源の相互作用は,HollingのII型の機能の反応を示すと仮定する。そして,被食者の捕食回避行動により,捕食者密度が高まるほど被食者の摂餌率と捕食者の被食者との遭遇率が低下すると仮定する。<br> このモデルは,捕食回避行動がなくても,カオスなどの複雑な挙動を示すので,捕食者の餌処理時間を無視できる場合を考える。被食者の資源処理時間が大きければ,捕食者の死亡率が中程度のとき,安定と不安定の2つの共存平衡状態が存在し,初期状態に依存して捕食者が絶滅する。ここで,捕食回避行動による被食者の摂餌率の減少は,共存平衡状態を存在しやすくする安定化の効果をもつが,捕食者の被食者との遭遇率の減少は,共存平衡状態を存続しにくくする不安定効果をもつ。さらに,被食者との遭遇率の減少を引き起こす捕食者1個体あたりの効果が大きくなれば,共存平衡状態が不安定化しリミットサイクルが現れる。捕食回避行動の及ぼす2つの間接効果の大きさの兼ね合いで,安定と不安定の2つのリミットサイクルが出現することもある。この場合も,捕食者の被食者との遭遇率が減る効果は不安定化要因であるが,予備的な研究の結果では,捕食者の餌処理時間が無視できない場合には異なる結論が得られている。
収録刊行物
-
- 日本生態学会大会講演要旨集
-
日本生態学会大会講演要旨集 ESJ51 (0), 362-362, 2004
日本生態学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390282680667129344
-
- NII論文ID
- 130007011968
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可