沿岸の人工干潟の施工事例とその問題点
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- 中瀬 浩太
- 五洋建設(株)環境事業部
書誌事項
- タイトル別名
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- Construction examples and their probrems of coastal artificial tidal-flats.
説明
人工干潟は今までに2,100ha程度造成されている.また,平成19年までに港湾事業では4,000haの干潟を,水産事業では5,000haの干潟と藻場を造成することになっている.今までの人工干潟は,大部分が東京都葛西海浜公園,広島県五日市人工干潟に代表される前浜干潟である.人工干潟の多くはアサリ漁場等の水産目的や公園的施設として計画されるが,浚渫土の有効利用としても計画されることもある.これらの人工干潟は基本的に埋立地造成の技術を用いて建設されている.<br> 人工干潟を地盤が軟弱な場所に建設したり,内部の充填材料に浚渫土などを用いると,干潟面が沈下する.これについては,予め沈下予測を行い,沈下量を見込んで施工するが,沈下が進行すると造成した干潟が縮小する印象を与える.なお,沈下が起こると干潟の勾配が大きくなり,このため干潟面への波浪の影響が強くなり,浸食や底質粒子の淘汰が促進され,生物相に影響を及ぼす場合がある.また人工干潟は自然に干潟が形成されない外力の影響が大きな場所に作られることもある.浸食については,多くの干潟が1年確率波を条件に設計されているので,数年に1回程度の大型台風等が来襲すると,波浪による浸食で干潟の地形が変化する.これにも対応可能にすると波浪制御のコストがかかる.<br> 完成後の人工干潟は生物相が貧弱であるといわれるが,完成後の生物相の変化状況についての情報は少ない.また,潮干狩りのように特定の生物の増殖を目的とする場合以外は,どのような生物相が形成されれば干潟として成功したと言えるか,明確な指針がない.<br> 人工干潟の設計条件や地形・地盤高の変化予測については十分な情報公開が必要である.また,地形・生物相については,継続的なモニタリングを実施し,その結果をフィードバックして利用・補修などの計画を検討してゆくべきである.
収録刊行物
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- 日本生態学会大会講演要旨集
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日本生態学会大会講演要旨集 ESJ51 (0), 61-61, 2004
日本生態学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680667338496
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- NII論文ID
- 130007012342
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可