タンガニイカ湖産エビ食者魚類の左右性の動態とその機構

DOI
  • 竹内 勇一
    京都大学大学院 理学研究科 動物生態学教室
  • 堀 道雄
    京都大学大学院 理学研究科 動物生態学教室

書誌事項

タイトル別名
  • Dynamics and mechanism of laterality in shrimp-eating cichlid fish in Lake Tanganyika.

抄録

タンガニイカ湖に生息するシクリッド科魚類の多くは、類似した食物資源を共有している。なかでも、エビ食者は他のベントス食者より種数や個体数で優位である。この湖の鱗食者は左右性という種内二型を示し、その個体群内での比率は0.5を中心に5年周期の振動をしていることが知られていた。ところが、最近、湖に住む全ての魚類が左右性をもつことが発見され、魚食者においても左右性の比率が振動していることが分かってきた。 本研究の目的は、同所的に生息するエビ食者5種(L. callipterus, N. furcifer, N. cylindricus, A. compressiceps, G. pfefferi)について、その左右性の比率の年変動とそのメカニズムを明らかにすることである。 私たちは、湖の南端に位置するカセンガで、過去10年間、毎年これら5種のエビ食者を採集し、左右性の比率の年変動を調べた。その結果、各エビ食者の左右性の比率は、鱗食者と同様に、0.5を中心に0.3-0.7の振幅で数年周期の振動をしていることが分かった。また、それぞれの種の胃内容分析を行ったところ、どの種も常にその年の少数派の利き手の方が、多くのエビを食べていることが明らかになった。 鱗食者や魚食者では、左右性の比率の振動は、頻度依存淘汰に起因することが示されている。これらの捕食者では、自分とは反対の利き手の被食者を多く捕食するが、それは、捕食者には捕食行動時に得意な方向があり、被食者にも警戒や回避について得意な方向があるからだと考えられる。したがって、今回の結果は、被食者であるエビも左右性をもち、エビ食者の左右性の振動は、魚類とエビの相互作用によって引き起こされることを示唆している。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680667581696
  • NII論文ID
    130007012700
  • DOI
    10.14848/esj.esj52.0.382.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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