亜高山帯針葉樹種,オオシラビソ,シラビソ,およびトウヒの更新・共存機構

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タイトル別名
  • Regeneration and coexistence of three climax subalpine conifer species, Abies mariesii, Abies veitchii, and Picea jezoensis var. hondoensis

抄録

オオシラビソ,シラビソ(以上モミ属;Abies),およびトウヒ(トウヒ属;Picea)が優占する中部山岳地帯御岳山の亜高山帯林において,3種の更新および共存機構を研究した。これまで本州中部の亜高山帯林におけるAbies-Piceaの共存は,Abiesは高い林内移入率を持つ代わりに短い寿命しか持たず,逆にPiceaは長い寿命が低い林内移入率を補うという,生活史特性における違いにより共存が維持されるという仮説(Different life-history strategy hypothesis)が強く支持されてきた。しかし,他のAbies-Picea林における2つの仮説(更新ニッチの違いによる共存の成立;Niche partitioning hypothesis, 大規模撹乱がトウヒの競争排除を防ぐことによる共存;Non-equilibrium coexistence hypothesis)については考慮されてこなかった。本研究では,これら3つの仮説に基づき3種の共存機構を検証したところ,林内で強い耐陰性を示すモミ属2種は主にニッチの違いにより個体群の存続および共存が成り立っていること,トウヒの存続には大規模撹乱が必要であり,撹乱なしに生活史特性の違いだけでは共存できないことが示唆された。さらに,大規模撹乱はトウヒにとって成長・更新に有利な環境を創出するので,この点においてトウヒにとっての更新ニッチを生み出しているとも言える。したがって,3つの仮説は相互に排他的なものではなく,本研究の亜高山帯林における3種の共存はニッチの違い,生活史特性の違い,そして大規模撹乱による個体群の維持のすべてが重要であると考えられた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680667943680
  • NII論文ID
    130007013256
  • DOI
    10.14848/esj.esj52.0.503.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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