チベット南東域の水環境に関する水文地理学的研究

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  • Hydrogeographical Study on the Water environment in the South Eastern Part of Tibetan Plateau

抄録

<BR>I はじめに<BR>  本研究は、中国西蔵自治区の湖沼を主とする水文環境の特性を比較陸水学および水文地理学的視点から明確にし、プマユムツォ湖の自然誌的位置づけを明らかにするとともに、水質・水温などの現地観測から、夏季のプマユムツォ湖の陸水物理学的性質を明らかにすることを目的として行なわれた。東海大・名古屋大・中部大・名古屋文理大及び中国科学院との共同研究で、移動班とプマユムツォ湖固定班に分かれ、現地調査を行なった。<BR> <BR> II 対象地域概要<BR>  プマユムツォ湖(普莫雍錯)は、北緯90度24分、東経28度34分の、西蔵自治区の地級都市ラサより南西約150kmほどに位置する淡水湖で、湖面積328.4m2、湖面高度は5009mである。西岸には、上流域に氷河を有するもっとも主要な流入河川が流入し、デルタ状の広い低地が形成されている。湖東岸には、湖で唯一の流出口が存在し、東流し徐々に流路を北に向け、プマユムツォ湖の北方に位置するヤムドゥク湖(羊卓雍錯)に流入している。プマユムツォ湖北岸には分水界が近接し、分水界の北側はヤムドゥク湖に南から流入する河川の流域となっている。<BR> <BR> III 研究方法<BR>  様々なスケールの世界航空地形図と、中国で発行された中国西蔵自治区の水文に関する文献などを画像処理し、様々な水文情報をデータベース化し、主題図を作成した。移動観測班はそれらの情報を基に、広範囲に移動し、様々な陸水の水質を測定するとともに、ヤムドゥク湖については、水質・水温の鉛直分布の断面観測を行なった。<BR>  プマユムツォ湖固定観測班は、GPSを用いた漂流板追跡によって湖流を計測し、気温・湿度・風向・風速・日射などを測定するとともに、湖水温の連続観測を行った。<BR>  また、多項目水質計を用いて、水温・電気伝導度・pH・DOの鉛直分布を測定し、水温分布を確認後、表層・水温躍層上層・水温躍層付近・水温躍層下層・底層の5層程度の採水を行い分析した。<BR> <BR> IV 結果・考察<BR>  今回は、ラサを中心とした南北断面の調査しかできなかったが、プマユムツォ湖の存在するヤルツァンポ川流域(蔵南谷地)と、閉塞湖が多い西蔵自治区中央部(青蔵高原)の性質の違いが明らかになるなど、気候区や大河川水系ごとの水環境の違いについての予察的な知見が得られた。<BR> <BR> V おわりに<BR>  中国西蔵自治区の水文環境の特性を明確にするためには、これら湖沼郡が、性質の違う大河川の源流部を多く有しているという特徴を考慮し、広範囲に調査する必要がある。今後の調査では対象地域をさらに広げ、多くの水文区分を跨ぐ調査にしたい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680668400128
  • NII論文ID
    130007013804
  • DOI
    10.14866/ajg.2007s.0.117.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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